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物語論で読む村上春樹と宮崎駿 ――構造しかない日本

物語論で読む村上春樹と宮崎駿 ――構造しかない日本 (角川oneテーマ21)
物語論で読む村上春樹と宮崎駿  ――構造しかない日本 (角川oneテーマ21)大塚 英志

角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-07-10
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この本は物語の構造からストーリーを組み立てる手法を喧伝してきた大塚氏が、他のプロが同じことをしていると不満を述べています。

では構造だけではなく中身もある物語は例えば何かというのが全く上がっていないので、意味が良く分かりません。この新書自体が構造しかない本というネタかと穿ってしまいました。

宮崎駿の息子の映画が失敗作なのは、欠損した物語に自我を委ねる今の右翼と同じとか、

それが駄作なのは皆知っているのでこれ以上、ムシらなくても、七光りにイヤミなのか。

世相を熱く語れ、と彼は言いたいのか。

ジェイムスキャメロンや村上春樹は、イラク戦争を止める力を持たないみたいなことを言いますが、なら大塚氏の漫画は止める力を持っていたのか。

あいかわらず日本の戦後民主主義擁護やアメリカのイラク進攻批判なので、またかよ、なのですが、アメリカのイラク進攻を止める物語というのは、あるのかどうか。

元々著者は、戦後レジームの見直しなどが叫ばれる中で、対抗して憲法9条を守ろうという運動をしている人です。

なので、今の大作家たちは昔の大作家と違い、時代と関わり合いになろうとせず、安全地帯で毒にも薬にもならない話をこさえるだけで、

そういう危機に瀕している日本の民主主義などを守るために戦う人がいないので、けしからんというふうに考えて、構造しかないという批判をしているのか。

この本の俎上に上がるのは、宮崎駿村上春樹以外には、ジェイムスキャメロンなど、左寄りの作家ばかりで、右翼はそもそも相手にしていないようです。

もしかしたら右翼のほうが著者のいう中身のある話を作っているというか、一時期流行ったセカイ系なども、日本人が9条などの戒めをといて世界と直接かかわる手段といえないことはないです。

右寄りの物語は、永遠のゼロやハリウッド映画など、言われてみれば構造よりも率直なイデオロギーの表出や俺語りが多く、同じ左陣営としては忸怩たる思いなのでしょうか。

作家のほうも、下手に時代と戦って捨石にされるよりは、1000年後に全集に入ったり、世界の人に読んでもらうことを優先するのかもしれないし、彼は作家なのだから、自分で書くしかありません。

世の中に誰か特別な人の固有の物語なんていうのはなくて、人口に膾炙して普遍化すれば、それは誰の物語でもあり得る=構造化する、ような気がします。

近代における私人というものが、不可侵にして唯一無二の私の心であると強弁するのが、大塚氏のような気がします。

彼はその私人の心に、アクセスして影響を与えようとしているにもかかわらず。

私は、あらゆる人は、世の中に流通するいろいろな既存の物語に影響をうけた、既製品としての私人だと捉えるので、何となくズレてしまいます。

もちろん自分のオリジナリティを他人に譲り渡す気はないのですが。自分の心を、何にも影響されない、まっさらな私人とはいえない。