ちきうアネクドート

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シンセミア

シンセミア(上)
シンセミア(上) 阿 部 和重

朝日新聞社 2003-10-17
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地方のフリーターたちが、1990年代頃の、国の監視カメラ網敷き敷き設置に対抗して、盗撮サークルを立ち上げます。

コレは、アメリカから流れてきた利権に飛びついた、一連の監視政策の批判ですよ、というのが序盤の小麦の話で示されます。

盗撮権を市民の手へ。

彼らは、ほのぼの映像を流しているテレビの素人投稿コーナーなどを唾棄すべきと叫び、素人投稿といえば盗撮に決まっていると嘯きます。

盗撮魔だらけだし、地方の警官はロリコンです。

アホなんですが、いろいろ今時な感じです。

が、監視カメラのネットワークの、万能の神の目の前では皆アホであることから逃れられない。

書いてあることはスタイリッシュの極みですが、だがらその町のごとからオレはもう手さひきてえっていってんだ、とか全編田舎語でごまかすなどの、高踏技を見せて、貫禄です。

同じ著者の渋谷のフリーターをオシャレにとった、インディビジュアル・プロジェクションとかの田舎版の印象です。

監視政策でアイデンテイティが不安定になった人が徘徊している危険な街、それが2000年前後のミレニアムな日本です。

筆者は日本史や現代性をテーマにしていろいろ野心があるようですが、その批判精神などは、明治の頃などと比べると相当わかりにくくなってきています。

盗撮サークルをたちあげたからといって、変態ばかりというわけではなくて、ミョーに普通で、街に溶け込んでるホームレスがいたり、ロリコン警官が女子高生とつきあってたり、果たしてPTAの毒牙に掛からない、古き良きと括っていいのか不明な、コンプライアンスがしっかりしていない地方都市です。

全てを盗撮されては、コンプライアンスも何もあったもんではありません。そして、多くのものの境界線が崩れていきます。

個々の小さな不祥事がドミノ式に思いがけない崩壊を引き起こす、ワイドショーで報道陣のおしかける、事件の起きた地方都市などを彷彿とさせます。

この街の成り立ちは、地場産業とか、企業城下町とか、ではなくて、米軍基地ができて、小麦粉をアメリカから輸入してて主人公はパン屋です。そういうアメリカ・オリエンテットな街が舞台です。

盗撮システムとかもそういう流れで、外からの資本の流れで街の勢力が変わります。

冒頭に聖書の引用とかあって、街ができて、崩れていく、というタペストリーというか、黙示録などをモチーフにしているようです。

普通のところに、監視システムという変態的な要素を投げいれる、人工シムシティというか、壮大なスケールの崩壊劇になっています。バベルの塔の映像版か。逆か。

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