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さようなら、オレンジ

さようなら、オレンジ (ちくま文庫)
さようなら、オレンジ (ちくま文庫) 岩城 けい

筑摩書房 2015-09-09
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日本の教養のある夫婦がオーストラリアに赴き、そのインテリの奥さんの方(ハリネズミ)が趣味で小説を書いているのですが、語学学校でアフリカの難民の女性に出会います。

難民の彼女は旦那に出て行かれ、精肉工場で働く文盲で、いわゆる底辺ですが、人生経験などでは彼女に敵わないとハリネズミは思い、文字を綴れる特権を生かして、そのアフリカ人女性=サリマに仮託して本小説を書いたということになっています。

 

サリマは毎日、日の出る前に出勤して、工場の小さな窓から見る、朝焼けの何でもとかしてしまうようなオレンジの空と比べて、

精肉工場の白いタイルと、血の赤と、私の褐色の肌が、まじりあわないとか、移民のつらい生活を描いた生々しい表現が映えています。


元難民のサリマは、同じ工場の働き手たちが話す「あそこのスーパーで○○が手に入る」という平べったい日常の世界とは別のものの扉を開くために、語学学校へ通い、ハリネズミたちと出会います。

語学学校は、他に妖精のような北欧のリゾート滞在者などがメンバーです。


人々のおしゃべりや文字から疎外された地で暮らすのは、どうしようもなく孤独ですが、

英語のほとんどわからないサリマにできて、英語が比較的堪能な日本人のハリネズミにできないのは何故なのか。


国へ帰っても何もない難民キャンプ出身のサリマは、厳しい労働も含めたオーストラリアでの生活に夢中になり、

語学学校の宿題をやっている彼女を、学校で英語を習って熟達している子供たちが、女はバカだと言っていた夫と同じ目で見て、おまけに彼らは都心でいい仕事にありついた夫の方に引き取られて出て行ってしまいますが、

それすら彼女には些細なことだと感じるまでになっています。また精肉工場での着実な仕事ぶりを、朴訥な白人のマネージャーに気に入られて、デートに誘われたりしています。


普通の日本人が先進国へ行くと、現地での自分の存在感の薄さに、

これまで培ってきた日本の知識のほうが勝ってしまうのか、水村美苗のような日本文学オタクみたいな詰まらない方へ行ってしまうのもありますが、

これは産業の空洞化や欧米での移民の活躍など、ぬるま湯育ちの日本人は、彼らのバイタリティには勝てないというのは多くの人が薄々感じていたことで、グサリとくるところがありそうです。

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