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カブールの燕たち

カブールの燕たち (ハヤカワepi ブック・プラネット)
カブールの燕たち (ハヤカワepi ブック・プラネット) ヤスミナ・カドラ 香川 由利子

早川書房 2007-02-23
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アフガニスタンソ連の戦いで傷ついたときに、戦場から運び出して看病してくれた、命の恩人の妻をめとり、年老いた彼女が病気になっても見捨てることができない、カフカのような無常観を抱える看守と、

アフガニスタンがまだ自由だった頃に誰もが羨む才媛をめとったフェミニストふうの男性が主人公です。彼らが魂を求めてさまようのは、長年ソ連とアメリカの侵略を受け、タリバンが台頭して腐りつつある、不吉な土地、カブール、かつて生活があったはずの彼らの土地です。

 

戦中のドサクサの闇商売で成功している幼馴染は、病気の妻のことで悩んでいるカフカに、その腐った雌犬を捨てろ、といいます。

町中ではタリバン民兵が棍棒を振り回して人々を礼拝堂に押し込めたり、

傷痍軍人が乞食をしつつ、アフガニスタンの聖戦士の死体は腐敗しても匂わないとか、俺は瀕死で天使の抱擁を押しのけたとか、昔のソ連侵攻時の戦いの自慢を繰りかえしています。

街では日に日にどこかから湧いてくる孤児が野犬のようにうろついて、タリバン公開処刑のマネをして、乞食たちの歓心を買ったりしています。

昔の辛気臭い抑圧とは違う、スタイリッシュな抑圧というか、文体とか良いので、イスラムとかどうでもよくて、シャレたアメリカ文学とか読んでいる人にもオススメです。

作者はチュニジアかどこかの軍人で、アフガンを現場で知っているわけではないようですが、はじめは女性名義で出版して誰も疑わなかったほどアンチイスラムな感性です。

ある日、才媛が口論した拍子に夫を突き飛ばして殺してしまい、囚人としてカフカの元に送られてきますが、

彼女がベールを取った途端に、暗い気持ちで毎日を過ごしていたカフカに天啓が下ります。

彼は老いらくの恋に呆けてしまい、そのことを隠しきれずに、病気の妻に打ち明けると、彼女は身代わりになって処刑され、囚人と夫を逃がします。

糟糠の妻が犠牲になるのは女性陣には評判が悪そうですが、彼女は、女性を抑え込むイスラムの風習の中にいて、戦中で助ける男性を手ずから選び、その彼を射止め、

だから彼にも自由に動いてほしい、イスラムの戒律を超えた自由な恋への憧憬に殉じた感じでした。

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