ちきうアネクドート

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インモラル・アンリアル―現代タイ文学 ウィン・リョウワーリン短編集

インモラル・アンリアル―現代タイ文学 ウィン・リョウワーリン短編集
インモラル・アンリアル―現代タイ文学 ウィン・リョウワーリン短編集 ウィン リョウワーリン Win Lyovarin

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途上国の知識人の苦悩がよくわかり良いと思います。

タイでは貧しい地域から売られてきた少女が売春窟でポン引きに殴られ、

黒い金のバラまかれる政治を変えたくて、学生たちは定期的に暴動を起こすけれど、

警官に鎮圧されたり、武力衝突で不具になったり、ロクな目にあいません。

児童買春は要人接待とか、先進国の人が小金を落とすから根絶しにくいようだし、

日本の学生運動は、ソ連のパシリとかいわれて今では麻疹みたいに思われてるけど、途上国の学生運動はリアルです。


こういう黒い社会だと、働いている人も、俺は取引先の靴とか舐めてるし、何ならケツも貸すし、売春したくないとか甘え、みたいな人が増えてきて、

もしくは老人や失業者は路上でボーっとして仏像を拝んだりしている方がラクだったりして、あまり変わらないようです。

 

短編が10コくらい入っていますが、3つだけ紹介します。

 

 

タイでは選挙で政治家の頭がスゲ変えられるたびに右往左往して、ご機嫌伺いに行く役人がいます。

猟官制なのか、分からないですが、軍門に下っておかないとマズイみたいです。

それで、その行脚ツアーの役人の団体バスが1匹の野良犬をはねます。

タイの役人は等級があって、下の1級から上の41級まであると書いてあります。本当なのかネタなのか。

主人公はハネた犬が気になるのでバスを止めてくれと言い、バカ言えと全員にシカトされます。

その夜、彼がバスの中で居眠りをすると、バスがまた犬をはねて、今度は彼は助けに行くのですが、逆に助けた犬に食い殺されます。

それは夢で彼は脂汗を書き、他の人に揺り起こされます。

そしてバスは、また野良犬をはねます。

彼は不意に、子供の頃に森で食事をとった帰り道に、山火事になるといけないからといわれて、遠い道のりを焚火を消しに戻ったことを思い出します。

役人たちを残し、彼は1人でバスを降ります。

 

 

>死刑執行人

肉団子屋のドラキュラと呼ばれる大量殺戮者がつかまります。その店の肉団子には人肉が混じっていると噂され、調理場の壁には、殺した人数と思しき血文字が残ります。

主人公の看守が取り調べに当たり、ドラキュラに、犯行について話してほしければ、お前の人殺しの話をしろ、お前の話の1つにつき、俺も1つ話してやると言われます。

彼は取り調べの為に、取引に応じます。

看守の殺人は、義憤に駆られた結果だったり、軍務中です。

看守は、子供の頃から鳥を締めるときに気絶するほど気が弱かったけれど、軍人になってから敵や悪人を撲殺するのが快感になっていきます。

正義の味方シンドロームとでもいうのか。

が、看守と違い、ドラキュラの殺人は、良心の欠片も無い、とんでもない事件ばかりです。

牛を殺している間に狂気が忍び込んだとか、彼らの目はバカみたいに澄んでいる、牛を殺す時は、目をみなければ良い、とか。脈絡もなく、無駄に人を殺していきます。

屠殺の仕事に頭を犯されて狂っているドラキュラの殺人に胸糞が悪くなり、看守は途中でキレて中座します。

 


>ラート・エカテートの三つの世界


ゴヤのナポレオンのスペイン侵攻とか、北斎とか、ゴッホとかの絵が載っています。

偽物だと思いますが、それぞれの絵を部屋に掛けている1人は画家で、1人は将校、1人はポン引きですが、何故か全員売春窟の子供です。

児童買春で有名なタイですが。

売春婦の望まれない子供だったのか、売春窟に放置されて親の知れない彼は、近所の店でお菓子か何かを盗みます。

主人に見つかり、僕は売春宿の息子です、すみませんでした、といえば許してやるといわれて土下座し、大人になっても、その屈辱的な目線を折に触れて思い出します。

画家と将校は、それぞれ別々のときに、売春窟から女の子を逃がそうとしますが、ポン引きに見つかって、臆病風に吹かれて何もしないで出てきます。

ポン引きが、お前には良い人がたくさんいるな、というと、女の子は媚びて、私はあんたが好きよ、あんたのほうが強いから、といい、彼は、女に好かれる為には殴らないといけないことに気が付きます。

学生運動の鎮圧のときに、勤務中の将校が側を通りかかったポン引きを撃ち、ポン引きは足が不自由になって、画家は学生活動家ですが、何もできなくて傍観しています。

中年にさし掛かった彼らは、自殺のつもりでロシアンルーレットをして九死に一生を得ますが、そのピストルには元々弾が入っていないのです。

それぞれ3人が、もし勇気があったらできたことが書いてあり、全部傍線で消してあります。