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絹と明察

絹と明察 (新潮文庫)
絹と明察 (新潮文庫) 三島 由紀夫

新潮社 1987-09-30
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天皇は祭事の長ですが、世間で実権を握っている征夷大将軍とは別件です。

また、会社経営者を父とみなす政教一致的な見方は、経営と株式の分離で、死に絶えた感じがしますが、明治維新以降、そして軍部のクビが飛んだ戦後はそういうことになるのでしょうか。

とりあえず、戦中に戦略哲学研究所などの胡散臭いサロンを開いて要人と交流していた文化人がいて、戦後はフリーランスのような立場で、繊維業界でゴロをまいたりします。

競合他者は合理化が進んでいますが、1人琵琶湖かどこかで家族経営を掲げた古臭い経営スタイルを取っている人がいます。コキ使われる工員を愛しいわが子とかいう思い込みの激しい社長で、文化人はそれをみて不穏な気持ちになり、隠密に労働組合を煽ってスキャンダルにします。

19世紀とかの劇を、ビジネス界でやったような感じで、組合の闘争とか、芸者と糟糠の妻とか、いろいろ混じっているので、スッキリしたことが書きにくいです。

組合員の独白で、世界はまだ竣工していないかもしれない、という書き込みがあり、今に至っても、経済のシステムがどうあるのが人々にとって一番良いのか、ノーベル賞を貰った経済学者ですら分からず、

元大蔵官僚とはいえ一文学者の三島由紀夫の手には負えず、尻つぼみといえば尻つぼみです。

若手だと自己啓発などのビジネス書や、古株の企業人だと愛読書に司馬遼太郎が多かったり、企業人としての人生を、スポーツや戦国武将などのアナロジーで済まされたりする中で、経済人を含めた産業の歯車の人たちの人生を、文学的に考察している本は珍しいです。

三島由紀夫は、知識の幅が広くて、いろいろ手を出すけれど、文体を変えないので、汚い工場の脇の琵琶湖の百景が美しく書いてあるとか、アンバランスです。

戦争ものを兵卒ではなく将校の立場で書いたら、文芸にならずに歴史ものなどになってしまうのと同じで、異なる要素が混じり、成功しているのかどうか定かではないです。

女性メンバーは、偉い人たちの接待をしていた芸者が引退して、工場の寮母になるなどの要素もあり、三島由紀夫に似た感じもあります。

階級がミックスされているのかされていないのか、資本家と労働者をひとところに並べる経済は不思議な領域です。

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