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ミカドの肖像

ミカドの肖像 (小学館文庫)
ミカドの肖像 (小学館文庫) 猪瀬 直樹

小学館 2005-03
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西洋はクリスチャンを中心へ、ユダヤ人を周縁に置きます。ユダヤ人の位置は20世紀、日本人へ変わります。

また大陸諸国には、確固たる中央が必要だが、四方を海に囲まれた温室の日本では、中央は空洞化します。

戦中の空襲のさなかにすら土地の売買の電話をしていた西武鉄道のファミリーが、

没落していく宮家の親族たちを、飛ぶ鳥を落とす勢いだった西武鉄道の社員として迎えることを条件に、宮家の土地を次々と買収していきます。

素人が土地を持っていたところで、相続税だけで飛んでしまうという噂で、だったら終身雇用のポストと引き換えに現金を受け取る方が、都合がよかったのかもしれません。

皇居近くの丸ビル群で、皇居の中が見えてしまう建物を建てられない話とか。

明文規制ではなく、ただどこかから圧力がかかり、高めのビルを建てようとした、東京海上火災が、圧力の正体を探るために、政治家めぐりをしなければならなかったとか。

そうした土地関係の取材への執着が、都関係の仕事をし、知事にまで上り詰めたことと、どうつながるのか、肝心なことが書いてない辺りは、ロランバルトの皇居は空白をそのままなぞった感じで、完成度が高いです。

そのミッシングリンクを埋めるのは、誰の仕事になるのか。

筆記者の権利は、スターリン毛沢東の伝記のように、海外の人の手に渡るのか。カレン・ウォルフレンの日本、権力構造の謎というベストセラーもありました。

本書は、あそこまでは明記せず、代わりに文学的記述で埋めています。

日本が世界へデビューした19世紀、ミカドというタイトルのオペラが、イギリスの史実にあった血なまぐさい一揆と組み合わされて、残酷性をまとって演じられた、というのは、現実と逆転しています。

農民と為政者が互いに首を斬って街に晒しあう、ワット・タイラーの乱は、当時、マグナ・カルタの制定など、理性の歴史だったイギリス史の特異点で、それがミカドという極東の未知のシステムと結び付けられてイギリスの人々に消化されます。

ミカドは史上、一揆で庶民の首を飛ばしたことも飛ばされたことも無いし、誤解もいいところですが、

海外から見ると、天皇は間一髪で戦争犯罪人として裁かれるのを免れただけの、危ないシンボルです。見る人から見れば、あの穏やかな司祭の天皇が、悪鬼にもなりえます。

天皇は、欧米社会の基礎となっている、契約と法律で決められた存在ではない。昔からあるので、日本人がご利益を感じて、そのまま置いてあるだけです。

外国人からの、天皇は、日本人にとって、神であるか、神でないか、という質問は上手く答えられないです。

自分だったら、世界の宗教神を含めた、日本の八百万の神に、豊作や無病息災など、庶民の願いを伝える交渉人くらいに言いますが、為政者やその支持者には、神を意識して天皇制を利用している人は多そうです。

ミカドの内実は、明治憲法だったり、八紘一宇だったり、GHQだったり、自民党憲法改正案の言う天皇制だったり、この先は中国共産党かもしれないし、融通無碍に中身を変えられる空の器かも知れないが、

日本人自らの手で全てを追求せず、空洞を空洞のままにしておくルールを、わかっていることが権力へのアクセスを担保するようです。

後書きで、都庁関係者の立場から、西武のスキャンダルを指弾していますが、都知事のスキャンダルでブーメランが帰ってきて、新版では抜くのだろう。彼は、ミカドではなく、西武だったのか、真相は闇の中ですが。

かといって、ムスリムやクリスチャンが、彼らの神という空の器をどう利用しているかを考えると、相互、お前もナー同盟で国連でもできそうです。

猪瀬さんも、これだけ日本の裏と外皮を知っているなら、海外向けに一冊書いたら売れそうです。

初期値でこれなら、経験を積んで、さらにパワーアップしていると思います。逆に眼鏡が曇ってたら怖いですが、日本がそういう人を骨抜きにするヌエのようなシステムだとしたら。

 

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