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世界文学のフロンティア〈4〉ノスタルジア

世界文学のフロンティア〈4〉ノスタルジア
世界文学のフロンティア〈4〉ノスタルジア 今福 竜太

岩波書店 1996-11-18
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歴史が停滞の円環を破って進歩を始めた17世紀の産業革命以降、過去を甘く想起するノスタルジアはつねに疫病のように発生し、

逆のベクトルへ行くと未来を夢想するユートピアです。ここではない、どこか。天国の門をくぐり、雲の上で全てが手に入る場所です。

工業化でテンパっていた当時は、ノスタルジアユートピアの二極化への妄想が、猖獗を極めます。

その後は、消費社会化、ディズニーランドや旅行など、現代生活に疲れて庶民にお手軽なユートピアが商品化され、当時ほどの流行ではありません。

ナチス共産主義の2つが崩壊し、最早人類の麻疹だったユートピアですが、

共産革命に淡い期待と不気味な直観を抱き、ユートピアを執拗に否定したドストエフスキーニーチェにも、安易なノスタルジアなどが見られ、根が深い。

かつて傭兵の多かったスイス兵に故郷回帰願望が見られ、日本軍で故郷を歌う戦友という軍歌は禁止でした。

人々は二度の大戦で故郷喪失の念にとらわれ、

時代が円環でなければ、直線的に進んで過ちが二度と戻ってこないなら、反省や痛みを伴うことが無く、辛い時代も甘く回想することができます。

ホロコーストで亡くなった人より、ナチス時代が甘さを呼び起こす、倒錯した感情が蔓延ります。

歴史が永劫に繰り返すなら、行為の1つ1つが、耐えられない重さとなり、

過ぎ去った日々が二度と戻らないなら、行為の1つ1つが耐えられないほど軽くなります。

当時の急激な工業化やファシズム、よほど副作用がひどかったのか、

本文自体は、娼館の話など、それってユートピアじゃねーよというのが多かったです。隣の芝生は青い。

近代化された今でも、太古と変わらない生活をしている人たちはいるし、アーミッシュやインディアン自治区にでも行けば良い。

が、カオスで通り一遍でなく、面白いです。