ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

アメリカはカモじゃない3

 


戦争はいつだって人々を興奮させる。火の粉が自分の身に降りかからない限りは。

「モリグチっていう、このジャップはお前の知り合いか?」

酒場ではスマホのダーイッシュの首斬り画像が回っていて、

ハーシェルは隣の席の、誰だったか既に忘れかけた馴染の顔に聞かれた。

「日本は広いんだよ。ハワイじゃないんだ。全員が全員の知り合いなわけがない」

「お前が帰ってきて、お前の母ちゃんは、浮かない顔をしてるぜ。スーパーで買う肉の量が増えたとかこぼしてたって」

「お前はいつからスーパーのレジ打ちになったんだ。Kマートか?」

「Kマートはハンソンだよ。奴から聞いたんだ。お前の母ちゃんが、浮かない顔をしているってな」

「ふーん。でも、俺は、こいつのレジには並びたくないな。お前のそばかすだらけの顔を見てると、憂鬱な一日になりそうだ。

こいつに接客業なんか務まるか?

つり銭が偽札に代わってそうだし、掌も湿ってる」

「湿ってねーよ、触ってみるか」

「湿ってるじゃん」

「これはビールのジョキについた水なんだよ」

ハンソンは、手をジーパンで拭いた。

「そういえば、お前こそ、穀潰し小学校は卒業したか?ケツの青い奴は女に相手にされない」

ソニックは酒を置きに来たウェイトレスを自分の席の方へ引き寄せようとして、通路側へ逃げられた。


ハーシェルは沖縄から帰ってきたあと、しばらく軍務を予備役になった。

アメリカは日本やアラブをはじめ、世界中の基地を縮小しているので、

強いアメリカを標榜したところで、紛争の1つでも起きない限り、軍人の雇用が確保されるかは先行き不透明だった。

それでハーシェルはやることがなくて、地元の同級生で、工事現場などを転々としている、プーのソニックたちと昼間からバーでクダを撒いていた。

「日本人は良い奴らなのか?チンクとはどう違うの?」

「俺のいたのはオキナワだよ。
オキナワ人は日本人を憎んでいるよ。お前がこの街に巣食う大卒野郎が気にくわないように」

「こいつは良い日本人じゃーないのか。伝説の技術者とか書いてあるよ。油田の開発に携って20年とか」

ソニックは、首斬り画像が映っている、スマホを見た。

「掘削の技術者は俺もやりたかった。何と言っても、身入りが良さそうだし。俺は成績が足りなくて進学できなかったけど」
「工科大学とか行かないと無理なんじゃないのか」
「待てよ、大卒かどうかで良い奴か悪い奴か判定するのやめようぜ。俺たちがまるで脳無しみたいじゃないか」

 

 

 

ハーシェルは酒場を出るとシラフに戻り、職探しをするのが日課。

ああいうところに気晴らしでたまに入り浸るか、常連になって生活が崩壊していくか。彼ら自身にも、先行きが、よくわからない。

インターネット喫茶でハーシェルは、目が点になった。

資格、大卒と書いていない、ここまでペイのいい仕事をハーシェルは初めて目にした。

ハーシェルは自分ではアホではないつもりなので、業務内容を疑ってみた。生命の危険があるとか。

危ない仕事の求人広告が用いがちな常套句、カンタンなお仕事です、とは書いていないが、

所定の任務に従ってもらいます、一日10時間程度、福利厚生あり。そんなに胡散臭い感じではない。

今のままでも、このままいったら露助のようにアル中で死んでしまうかもしれないし。

 

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