ちきうアネクドート

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アメリカはカモじゃない8


比嘉たちは、戦闘のプロでは全然無い。

ここに派遣されるまでの半年、自衛隊で訓練を受けた。

例のアメリカ人に、身分は明かすなと言われたので、明かさなかった。

レッドネックの素人部隊を率いる、これまた素人の傭兵会社。そんなことを聞いたら、自衛隊は卒倒するだろう。

この話が懐に転がり込んだ瞬間から、比嘉たちの夜は、インターネットで軍事学漬け。防衛相は、あまりかかわってくれない。

「この先は、地雷原で2分の1くらいの確率で死ぬ?

そんなの、空からサーチして、地雷が埋まってるかどうかチェックするくらいの技術、あるでしょう」

ライト・ウィング社という、ペーパー・カンパニーの常務に名を貸した宮城が、文句を言った。

「ありそうなものが、無くて、無さそうなものが、あるんだよ。この世界は。ステルス戦闘機とか、スペース・シャトルとか」

比嘉たちは、レッド・ネックに混じって前線で戦う必要は必ずしもなかった。

アスカムという、例のアメリカ人から、彼らに与えられた、名目上のポジションは管理職だし、経営者だし、ホワイトカラーだ。

現場に出てしまうのは、日本人のクセかもしれない。

「俺はダーイッシュの兵士と戦って死ぬ覚悟はあるけど、地雷では死なない。

そういう死に方はしたくない。それにこういう地雷は、敵兵の戦闘力を削ぐ為に、片足が吹っ飛ぶくらいのレベルに抑えてあることが多い。

片足が吹っ飛んだ、そいつを助ける為に、他の兵士2人が、負傷者を担ぎ上げる、そうやって3人分の戦闘力を削ぐ。

ただ1人吹っ飛ばして殺すより効率が良いって寸法だよ」

「誰が考えたんだよ、そんなの。強制収容所で3000万人殺したスターリンよりひどくないか」

「そんなの記録に残らないんじゃないの。アメリカ人かもしれないし、ベトナム人かもしれないし、日本人かもしれない」

他にもニワカ自衛隊経験者の日本人が、ここには3人ほどいた。全員、このペーパーカンパニーに名前を貸した胡散臭い人間だ。

ただ、ライト・ウィング社が、こうして部隊を持ち、存在してしまっている以上、ペーパー・カンパニーもクソもない。アスカムの持ってきた話は、大分、詐欺臭かった。

そして、彼らの前職はせいぜい、米軍の御用聞きやサラリーマン、アルバイト。

従業員を死なすことなんかに、慣れていない。

比嘉が大声でレッド・ネックに向かって叫んだ。

「誰か行く人、いないんですか」

レッド・ネックの間を、シラっとした空気が漂った。何の為に金貰ってここに来てるのか。軍人なら、死に方の指定なんかできない。

言われた通りに突撃するだけ。

彼らは軍人ではないが、アスカムが、軍人より扱いやすいと思ったらこのザマだ。

もちろん、どう考えても、こっちの使い捨て作戦がマズイんだけど。

比嘉はこういう人種との、つきあいが長い。沖縄の米兵崩れとか。使い慣れた口語っぽい英語で、小型マイクを付けた比嘉の声が響く。

「はあ、なら、しばらくこう着状態ですか。

それなら、今夜はこの辺でキャンプを張っておきますが、いきなりミサイルが飛んできても、ビビらないでくださいね。

こっちから行かないなら、向こうからくるかもしれません」

 


砂漠に夜の帷が下り、比嘉たちはテントの中でゴロゴロした。こういうのは自衛隊で慣れた。

レッド・ネックたちは、酒を飲んで焚火をたいたりしていた。

囚人みたいなグループの方は、奇声を上げて、少し怖い。

採用基準は良くわからない。ただでさえ最終選考に残った人は少なかったから、あまり選んでいる余裕がなかった。

「地雷って本当に、空からサーチできないのか。

俺たち、無駄に、無駄死にじゃないか。

本当はそういう技術ってあるよ。でも勿体ないから使わない。

もうマトモな銃とか配るのも勿体ないくらい、安くなってるんだよ。俺たちの命は」

「空から地雷がサーチできたら、ダイヤモンドやレアメタルだってサーチできるだろ。土を透視する技術は無いんだよ、多分」

「レントゲンとか。レントゲンは骨だけだけど。MRAなんて脳とか内臓丸見えだよ」
「あれは高いじゃん」

「MRAは、ガンガンガンっていうのかけないと、反響が帰ってこないから無理だよ。開放空間では無理だと思う」

「水の中だと、ビーコン打って敵の潜水艦探すの、昔からあるのに。

土って意外と難しいのか。地震予知するするとかいっておいて、全然できてないよ。どれだけ国家予算が飛んでるのか。カリスマ・ナマズでも飼っとけよ」

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