ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

bananaman 2

 

「昨日、ニコ、スゴイかわいい子連れてたじゃん」
「そうなんだけど、ヤバいんだよ、俺は」
「何で」
アレックスは少し酒臭かった。ニコが女の子を連れて先に帰ってしまったので、スネた気持ちで店のカウンターに居残り、つい飲みすぎてしまった。

「彼女は。中学生だって。どうしよう。バックの中から学生証とか出て来たし。
彼女が、あのクラブに入ったことも違法だよ」


「警察にチクルとか、何か言われたの?」
「俺があのクラブに連れて行って、俺が家に連れて帰ったんだよ。ヤバイよ。おまけに、家に帰りたくないとか言って、うちに住みつかれそうな気配なんだけど」
「住みついてもらえば?お前の部屋って殺伐としてるし」
「得体が知れないじゃん。中学生だよ。家族から捜索願が出てて、警察が踏み込んで来たらどうするんだよ」

いつものようにダベりながら工場に向かっていたニコたちは、駐車場に落ちている鳩の死骸を見つけた。

飢えて死んだのか、病気か、他の動物に襲われたのか。

「これ社長のベンツの上に置こう」
「社長来てるのか」
「あのベンツがそうじゃん」
アレックスは、黒の平凡なベンツを指差した。


アレックスは、片手にぶる下げていた鳩を、黒いボンネットの上に置いた。

灰色の鳩の死骸の、羽の七色の部分が、日の光を受けて輝いた。

「いい感じだね」
フェラーリのマークみたいじゃね?」
「あれは馬じゃないの?」
「そうだっけ?俺は車に詳しくないから知らないや。フェラーリなんか、買えないし」

そのとき、2人の驚愕したことに、ベンツの後部座席のドアがあいた。

どこから出てきたのか。中に人がいないように見えたのに。

「鳩ですか。死んでますか。可哀想に」

シェンは鳩を手に取った。ニコたちは、逃げる機会を逃した。

「それ、どうするんですか」

「後で秘書に焼いてもらって、食べます」

シェンは、鳩を持ったまま、すたすたと工場の方へ歩いて行ってしまった。

 

 

 

エレンは一人で飲みに行くことが多かった。

学校で中華系の女の子は少ない。シェンはエレンを、地元の子供たちと同じ高校へ通わせていた。

「隣、座って良いですか」

ポニーテールの男性が、エレンの隣の空席を指差した。

「私をプラチナ・ハイソサエティで見たのね」

男は肩をすくめた。プラチナ・ハイソサエティは、流行りの経済人の、経営手法からプライベートまで多くを扱う、イロモノ・ビジネス雑誌。いかにも適当につけた、ひどいタイトル。

「俺はアジアン・ビューティーに目が無いだけだよ」

「私は、あのパパにそっくりだし。どう持ち上げたって、ビューティーって感じじゃないわよ」
「性格も、パパにそっくりなのか?」
「パパが、どういう性格だと思うの」
「彼は社長室で鳩を焼いて食うらしいぞ」
「何で読んだのよ。そんなくだらないこと」
「従業員のインタビューで紹介されてたんだよ」

エレンは、自宅にヘビやネズミが投げ込まれるのは知っている。しかし、それを焼いて食べてはいないはずだ。

エレンが二階から起きてくると、台所でママがそれを、一般ゴミと一緒にまとめていて、彼女を見て、肩をすくめたりした。

通学路で、ネオナチらしき陰気くさい男子生徒に、卵をぶつけられることもあった。

エレンは、学校で孤立してはいなかったが、ある程度の距離を置かれていた。

それに、中国人であろうとなかろうと、今時、高校で心からの友人を持っている人は少ない。

こういう場所で、興味に駆られた人々が話しかけてくるのは、エレンにとって、気休めになった。

エレンは、もう一軒行くことは断って、帰宅した。遊びが目的ではないから、いつも、早い時間に帰るのが彼女の日課。

地元の右翼ゴシップ雑誌に、中国人経営者の不良娘、金の力にあかせてご乱交、とか書かれても癪だし。

ポニーテールの胡散臭い彼は、悪い男じゃなかった。

悪いケースでは、話しかけてくる人たちは、CEOの娘の彼女の財布をあてにしていた。

男もいれば、女もいた。

そういうときは、「1000ペソしかないけど、一杯でいいかしら?」などというと、

シケた顔をして帰ってしまう人と、隣に座って飲んでいく人に分かれていた。

 

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