ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

bananaman 4


エレンは、フォルクスワーゲンの助手席に座っていた。

夜の街の灯りが、ガラス越しに前から後ろへ去っていくのを見ていた。

イイ男にナンパされたら、こんな感じか。走り去っていく多くのネオンサインが、どこへ行くのか分からない心細さと裏腹に、高鳴る気持ちを加速させる。

エレンに、そういう経験はない。誘われても、初対面の人が多いから、ついていくのは危険だ。エレンはパパ似のアジア人のファニー・フェイスだが、CEOのシェンの娘を誘う人は珍しくない。

「シェンの汚職のネタを知っている」

こんなことを言ってくる人は、これまでにも沢山いた。

何が目的かは分からなかった。

ユスリ、タカリか、シェンとお近づきになることか。

「今、夜総会っていう店に、シェンさんがいる。私はその店の常連なの」

アイスブルーのスーツの女性は、ある代議士の政策秘書をしているといった。

欧州の政策はどうなっているのか。エレンは、相手が女性なので気が緩んだ。

普段だったら、ついていかない。金銭目当ての誘拐犯かもしれないし、殺されるかも知れなかった。

エレンのスマホが震えた。通話にすると、懐かしい声がした。兄のルーラントだ。

「俺は今日、困ったことがあって、エレンに、一杯、付き合って欲しい」

エレンは、女性に事情を話した。

「夜総会のことは、すぐに済む。お兄さんは、どこに住んでいるの?」

コペンハーゲンの研究室にいるから、3時間くらい、かかると思いますけど」

 

 

 


「すみません、タオル濡らしちゃって、取り換えたいんですけど」

「少々お待ちください。すぐにお持ちします」

スタッフは使用済みのタオルを受け取ると、すぐに消えた。新しいタオルは1分ほどでアレックスの手に届けられた。この辺では、あまりないタイプの対応だ。

レックスは感心した。俺たちはアレか。貴族か。

普通のところだと、タオルの籠を指したり、タメ口で、このあと30分くらい待つのが一般的だ。つまり、客だからといって、他人を顎で使って、アレ取って来い、タオル取って来いって奴が悪い。客は神じゃない。

「何でお前、あのチンクが嫌いなの。あいつは、意外と良い奴だよ」

レックスとマリケは、健康ランドに来ていた。当初、中高年がターゲットと思われたが、辺りは若い人が多い。健康ランドは、仕事帰りの人が寄れるように、23時までやっていた。

マリケは、健康ランドには、勿体ないような水着を着ていた。ストライプの虹色ビキニ。

でもそんな、女子はたくさんいたから、そんなに目立っていなかった。ファンシーなイラストで見る、貝みたいなのを、つけている女の子がいた。

どこで買ったのか。ドンキホーテとかか。

そういえば最近南仏のリゾートとか行って無い、とアレックスは思った。子供の頃に、何回か行った程度だ。この辺の人たちは、概して、親の代の方が、裕福だった。

「でもここの従業員は、過剰な緊張を強いられていると思わない?」

テキパキと動き回り、客に頭を下げるスタッフたち。欧州平均のマッタリした従業員とは違う。

この健康ランドは、シェンが作ったという噂だった。

建設費を負担し、収益は市へ還元する。工場を置いている、地元対策だ。

入れ墨は禁止ではない。ハーケン・クロイツの入れ墨もチラホラあった。

ネオナチは、誰が経営とか、面倒くさいことは知らない。

ここになんか良い湯あるじゃん、入っとこう、って感じ。

「給料が良いんだよ。俺たちの工場と同じで。1800ペソもらえれば、このくらいは納得できる」

「でも、他の会社が真似をし始めるのよ。客を取られて、やっていけなくなるから。

次に似たようなサービスが乱立して、価格を落としていく。競争の為に。それで給料はどんどん落ちていく」

「お前、左翼だっけ」

「右翼とか左翼とかじゃない。せっかく欧州は良い雰囲気なのに、無駄なストレスの与えあいが嫌だと言っているだけ。挙句に、昔みたいに戦争になったらどうするの」

「お前って、極論がすごいよな。煽り屋として成功できるんじゃないの。テレビとかインターネットで」

広告を非表示にする