ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

bananaman 9

 

 

予算が増えたとか減ったとか、噂が飛び交う研究棟、

シェンには複数の欧州や中国の企業にコネがあるだろうが、

その様子を1つ窺ってきてくれ、なんて、息子のルーデンスが、教授や誰かから、直接言われたことは無い。

が、無言の圧力は感じる。

唐突に教授が、ルーデンスの隣の椅子に座った。

「この間は変な取材を頼んで悪かったね。キミはまだ博士なのに、一人前の研究者みたいな体裁で、無理を書かせた」
「あれは教授の差し金だったんですか」
「もちろん、私が許可しなければ、あんな研究内容を明かすインタビューは取れない」

「どうして父のことを書かせたんですか。ああいうの、教授は嫌なんじゃないですか。

少なくとも、僕は何かチンクが不正をしているとか、誤解されるから、嫌です。何が狙いですか」

「私たちの研究室は存亡の危機に陥っているんだよ。

もし欧州で試験運転が許可されなかったら、おシャカだし、ヨソの地域へ売り込みに行くのも難しい。

仮に許可されたとしても、ここへ予算をつけているデンマーク政府や、うちの研究室の契約しているところは、他社に追いつけないと考えているらしい。

欧州には、高速道路や特殊な場所でのデータはあるが、人の多い市街地を走らせたデータはない。

でも、シェンくんの、お父さんが、それを持っている」

 

 

 


朝っぱらから、何を言っているのか。両親の目が点になっていた。

コーヒーとトーストにオムレツが4つ。一家が揃った珍しい朝。

「データが欲しいって、何だよ。お前たちは、お父さんの髪の毛に盗聴器でも付けたのか?お父さんの髪の毛は、そんなにないけど」

シェンは最近、身辺が騒がしかった。抜け毛がますます増えそうだ。

それもまた週刊誌に書かれたりして、そんなことは気にしないつもりでいたが、どうして家族まで巻き込まれているのか。

「僕は、研究室の教授から聞いたんだよ。

エレンは、父さんのことを付けてる女がいた。エレンを夜総会に連れて行って、父さんと誰かの会話を盗み聞きした」

状況が掴めないが、シェンは、とりあえず答えた。相手がビジネスマンみたいな感じで。

「データが欲しいっていっても、私にはわからない。

中国の実証実験では、沢山の人が死んでいるし、欧州へそのまま導入していいものかどうか」

「父さんは、データを渡すだけじゃないですか。決めるのは地域やEUの議会か何かです。

安全対策を重ねれば、事故率だって減っていく。スペースシャトルなんかも随分人が死んだ」

「だけど、事故があったら、多分、全て私のせいにされるよ。

またこの間みたいに、鳩の死骸をベンツのフロントに載せて走ってるとか、書かれるんだよ。事故があったら、それじゃ済まない。きっと、お前たちにも迷惑がかかる」

「迷惑も何も、私もお兄ちゃんも、欧州で就職したいのよ。中国なんて、ほとんど知らないし、今更怖くて帰れない。

データの件を断って、クビにされるのは止めて」

 

 

 

 

 

「中国では人の命が安いと、シェン社長が訴え」

プラチナ・ハイソサエティは、本当に節操のない記事を載せる。右から左まで、狙っている読者層は無限だ。

シェンはデータを安易に導入して事故を起こしたり、非難の集中砲火を浴びたくなかった。

かといって、路頭に迷うと家族が困るし。

穏当に次の仕事を見つけてからクビになってください、とアドバイスした人がいて、職とインタビューの2つを持ってきた。

予定調和の空気が漂った。

「シェンは何で人権擁護派みたいになってるんですか。奴隷商人じゃなかったんですか」

「シェンを使った、この商談は終わりだ。市民を100人殺したデータは取引できない。

こうやって人権派に仕訳された、彼を通してはね。だから、他の奴を使うしかない。シェンはお払い箱だ。もう当社のCEOにしておく意味がない」

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