ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

bananaman 11

 

「僕が中国のスパイをやってると思っている人、手を上げて下さい」

ハ?研究に忙殺され、眠いとはいえ、ルーラントの唐突さに、会議室は静まり返った。

コレは、研究予算が何かヤバイっていう、気の乗らない話を全員で共有し、今後、身の振り方をどうするかという、話し合いだった。

ギリギリまで黙っておいて、嫌な噂が漂い、その日が来たら、唐突にクビになる、みたいのは、彼らの性に合わなかった。

黒い顔もあれば、白い顔もある、世界の精鋭が集まるはずのコペンハーゲンの研究室。

「ハーイ、俺思ってます。自己申告ですか」

彼は眠かった。眠いときは、行動が適当になってくる。隣の博士が言った。

「スカウトでもしてくれるのか。

中国企業は、俺たちの研究成果が、いかにも欲しそうだ。

それでも良いよ、俺は。

このまま研究室が閉じて、どこも雇わないんだったら。

中国は何か怖いから、あんたのお父さんに、俺を守ってくれるように頼んでくれ」

 

 

 


嘘歴2015年。

クラーセンは移民反対派。

欧州はどちらかというと、リベラルがオシャレな時代が続いた。

難民を受け入れるのが、格好良かった。

新興ビジネスエリートや、貴族みたいな連中を除くと、右派にまともな人材は少ない。ネオナチの頭目みたいな、ゴリラばかり。

クリスチャンは、世界的人口学者に、ゾンビ・カトリシズム、なんて呼ばれてる始末。

かどうかは知らないが、とりあえずそれが、クラーセンの勤める代議士の狙いだ。

右派として頭角を現したい。

そこには、マヌケな人種差別と区別するために、移民が混じっていたり。例えばサルコジ元大統領は東欧移民の子供だった。

それでも、かつてアメリカで暗殺されたJFKが、アイルランド人だったくらいのインパクトしかない。

カラードのシェンは有名人で、選挙民の気を惹くには使える駒だった。

「中国で、人の命が安いのは駄目なんです。

彼らは人殺しだと騒いで下さい。自分は祖国の人々が粗末に扱われているのが心が痛むと言って下さい。

社会福祉を実施させて、あのリーンすぎる使い捨て体質をなんとかしましょう」

「でも私は、欧州の奴隷商人などと書かれました。言うにこと欠いてこのハゲが死ねば、とか言われませんか」

「欧州の人の命の値段はあまりにも高すぎますから、こういっては何ですが、少し下げた方が良いです。

あまりに人を大切にし過ぎて、難民たちの桃源郷にされ、このままでは欧州は、沈んでしまいます。

もう生きる意志を持たない人には、安らかに逝くことを勧めるし、何のスキルも持たない難民は受け入れません」

インダストリー4.0は、実験だ。

スタートアップ企業はどこもブラックだ。

事態がどう転がっていくか分からない。

取引先も決まり、何年もやり慣れた、安定した仕事ではない。

徹夜続き、契約外の仕事、かき集めた人材で、何でもこなさないといけない。

労働右派の声が大きくなっていた。

欧州の温情的な労働法は使いにくい、多少の残業や、長時間労働を、許すべきだと。

そうしないと、新興国に抜かれるのは時間の問題だった。

新興企業は、合弁などで、買い慣らそうとしているものの。その一環が、シェンのCEOへの登用だったりした。

カラードはあくまで、傭兵、客、欧州を野蛮人に乗っ取らせるわけにはいかない。

そこへ、失業者や治安の悪化を憂う人々の歓心を買う為に、移民よりも地元の人を使うべしと言う。

労働右翼は、そんな感じ。

クラーセンは、この白人エスタブリッシュメントの支持を集める代議士の政策秘書をし、また、彼を利用していた。

シェンの娘のエレンをビジネスパートナーに担ぎ上げた。

エレンは言われたままに、休日にイモっぽいアジアの子を、スカウトしてきて、週日は経営学を学んでいる最中だ。

 

 

 


「体キツくないですか。僕のせいで、ここに圧力とかかけてませんか」

「俺たちは、アホじゃないよ。徹夜すると結果が出るとか、そう思ってる奴は、あんまり存在しない。

労働時間は長いけど、嫌なら転職すればいいんだし」

研究者のルーデンスは、シェンのような中国社会にコネを持つ、得体の知れない一世ではなかった。

ルーデンスがコペンハーゲンの同僚に紹介した転職先は、中国企業ではなく、シェンの在籍していた欧州企業、ホニャララグループだった。

何しろ彼は、今更中国に帰りたくない生粋の欧州人だった。

欧州のエスタブリッシュメントが、言うことを聞かせるのはたやすい。

「クビになったら、抜け毛が減りました」などと吹く間の抜けた元敏腕経営者のシェンに、優秀な研究者、息子のルーデンス、変なビジネスだ。

彼らは、中国のメディアに頻繁に出現した。

欧州留学のススメなのか、ホニャララグループの関連企業の広告なのか、欧州と中国を股に掛けた、キャリアアップのススメなのか、何だか分からない記事に。

彼らは、クライアントから言われたことをしゃべるだけ。よほど、マズイことでなければ。

2つの車が、似たような性能だった場合、自国民が活躍している企業から車を買うくらいのひいき心はある。中国市場向けの、欧州で活躍する中国人というストーリー。アジアの山猿心に火をつける。

こういうのを、ステルス・マーケティングと、いうかどうか。

取引相手の中国人たちは、ルーデンスの元へ、機密情報でも貰えないかとよく貢物を持って寄ってくるが、欧州に住み続けたい彼は、お引き取り願うしかない。

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