ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Кури́льские острова́1、(南クリル諸島=北方領土)カジノ

 

「ココは、シベリアなりの、スペシャルサービスがあるって聞いたんだけど」
「負けた奴を殺してくれるんだろ」
「どうやって?」
プーチンが直接手を下してくれる、とか」
「そいつはいいよ。俺はあの死神みたいな目に見つめられて死にたい」
「奴は一応大統領だからさ。マフィアのボスじゃないんだよ」
「彼はなるほど、マフィアのボスかもしれないが、マフィアのボスだって、そんなサービスはしてくれないよ」

 


スキラッチとガスコは機嫌よく話し込んでいた。ツキが来ている。彼らのテーブルの脇には、コインの山が積み上がっていた。

正面の芋粥は、シシリア系だった。スキラッチたちと、仲は悪くない。

芋粥は、スキラッチにコインを投げつけた。負けが込んでいた。

背後に大男の気配がし、襟の後ろを掴まれた。

「俺は負けが込んでいるやつを、つまみ出せってボスに言われたんだ」

「お前のボスは、ここの経営者じゃないだろ」

「お前らが、お行儀よく使わないと、出禁になっちまう」

「何でお前と同類扱いされてんだよ」

「シシリアだろうがカモッラだろうが、奴らにとってはイタ公だ。イタ公まとめてバンってなっちまう」

「ここは人種差別でもしてるのかよ」

「俺は人種差別するよ。だけど人種差別するやつは、ヘタをふんじゃいけない」

イタリア人の彼らが、こんな極東くんだりに来ているのは、罰ゲームだった。

彼らのボスは、自称、グローバル・トロッター、世界を飛び回るビジネスマンだ。

「何か適当に見つけて来い」「インターネットでは分からない、現地の臭いをかいで来い」って何だ。

ロシアの商用機にチャーターしてもらってここまで来た。

宝石、毛皮、レアメタル、毛ガニ。このあとは北海道から日本へ入って、成田で帰る。

面白そうなものが見つかったら、触手を伸ばすらしい。

この南クリル諸島北方領土のカジノは、インターネットの広告記事とは、全然違うという噂だった。

 

 

 

クリストフは、バチカンに足を踏み入れていた頃もあった。

直属の上司が、教会へ通う児童たちへの性的虐待で捕まる前は、将来を嘱託された神学生だった。黒い衝立の前から、酒臭い息と声がした。

「神父さん、俺は母ちゃんから盗んだ金をすってしまいました。明日は勝てるように祈って下さい。アーメン」

「神の御心がありますように。アーメン」

クリストフは、本当は自分が酒を飲んでカジノで遊びたくなるほど、腐っていた。

彼はここの誡告師だ。カトリック教会からの、左遷とでもいえようか。

シベリアに赴任したい人はあまりいないし、そこがカジノの街といえば尚更だった。

毎日ファブリーズを撒いているが、教会はつねに酒臭い。

クリストフは消臭剤を缶で買っていたが、この街のほとんどの場所が酒臭いので、消臭剤の業者は御殿を立てていた。

 

その金ピカの建物が、これまた奇妙な北方領土=南クリル諸島の景観にあっていた。

この通りの裏手には寺院とか、神社などがあった。

仏教徒や賽銭を投げたい人は、そっちへ行った。

彼らは檀家が減ったとかいう理由で、ここへ来ている。神の嬰児ですら凍てつきそうなこの土地へ。