ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Кури́льские острова́2

 

夜更けに店の裏を掃除していた足尾は、飲んだくれて壁に座り込んでいる長い栗毛の男を見つけた。

「大丈夫ですか?お泊りの場所まで、お送りしましょうか?」

「いいよ。女の子、呼んでくれないかな?」

「懐具合はどんな感じですか」

「スカンピンだよ」

足尾は肩をすくめて見せた。

教会は閉まっているし、深夜までやっている、更生施設に連れていくしかない。

 

「あんたが一度でもやらせてくれたら、俺は賭博中毒者を止めるよ」

張り倒したいが、これは仕事だ。

このオッサンは、いつもエリンの肩を抱いてくる。

ギリシアなまりの、変なロシア語。

シベリア以東で、素人が就業可能で、こんなペイの良い仕事はなかなか見つからない。

賭博中毒者のカウンセリングと、アル中の治療。

看護や給仕の専門学校へ行くには、お金がかかった。

ココは素人を採用していた。

今のところ、英語を話すスタッフ、ロシア語を話すスタッフ、日本語を話すスタッフがいた。

 

「カジノは資本主義経済の重要な一要素です。

ココは人々に時の間の娯楽と心の安らぎを提供します。

その中で、この施設は、そのゲームに負けた人々や、賭博中毒に苦しむ人たちを救う使命をもちます。

光があれば、闇があります。

その闇を少しでも、蝋燭の焔で明るくするのが、みなさん、1人1人のお仕事です」

部長がスタッフの間を、歩き回った。日本語の通訳が、訳して復唱した。

 

「今日は10ドルしか儲からなかったんだ。慰めてくれ」
「そうですか。明日は1000ドルくらい儲かると良いですね」

遠山は簡単な英語と日本語ができるので、ここへ採用された。

このヒーリング施設は、ただの負けた客のたまり場と化すこともあった。

深夜までやっていると、タダで寝に来る客も多く、床がイモ洗い状態になった。

客は選ばない。

ココは負け犬の吹き溜まりみたいなところだから、選んでいては成り立たなかった。

こいつは、アル中で、こいつは、アル中じゃない。

こいつは、賭博中毒で、こいつは、賭博中毒じゃない。

そんな判定は、入ってくる時点では不可能だ。

遠山が部屋の清掃をしていると、恰幅の良い栗毛の男に呼び止められた。常連だった。

「アンタはいい奴だから、今度おごってやるよ。非番のときはいつだ?」

アカロフさんは、手元にお金を残すのが先じゃないですか、散財に気が済んだら、適当に引き上げるっていうか。

ご家族が、お腹すかしてますよ」

「俺は、負けるまで気が済まないから、アンタは何もやらないのか、株とか」

「僕は運が悪いから、やらないです。でも、それって賭博中毒者なんですか?負けるまで気が済まないって」

「中毒者って言えば中毒者なんだろうな。デカい金にしか心が動かない」

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