ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Кури́льские острова́4


日本では、カジノ行政の批判をかわす為か、逆にターゲットをファミリー層にまで延ばす為か、

「賭け事では、掛け金の5割は胴元が持っていきます。お子様にギャンブルの仕組みを教えましょう」というパンフレットが出ていた。

カジノで5割取っててゲームが成り立つのか。

公然と、ラズベガス産のエンタテイメント産業をディスる図々しさ。

北方領土にカジノが建つことを快く思わない人々か。

彼らは、ゲームのルールを知らない。スロットの裏側を知らない。

松下は胡散臭いと思ったが、世の中のほとんどの博打は、胡散臭かった。だから、これでいいんだ。

「俺、あんまり気分盛り上がんないよ、コレ」

シケた顔をした大介の脇には、コインが積み上がっていた。

松下はスカンピンで焦っていた。

だからカジノは儲からない、真面目に勉強しなさいとか、息子に偉そうに説教を垂れようと思っていたのに。

このままでは、ここから導かれる真理はこうだ。「パパは勝てない。俺は勝てる」。

坊ちゃん、ツキがあるね、などと、隣の国籍不明のマフィアみたいな人が声をかけてきた。

教育の為には、負けるまでやらないといけないのか。このままでは、大介はカジノがウマイという印象を持って帰ってしまう。

室内は温かく、適当な格好でウロチョロしている子供はけっこういた。


「お姉さん、これ上げますから」
松下は、大介の勝った金を、通りがかりの女性=ニーナに押し付けた。

「OH」
ニーナは失業して他の土地へ移る前の記念にここへ来ていたが、全く当たらないので、つくづく自分の運の悪さをかみしめていたところだ。


「上げるのかよ、何ソレ。それも人生のルールなの」
「あぶく銭は身につかない」

白い眼で父親を見ていた大介の驚いたことに、

ロシア人女性は、「サンキュー!サンキュー!」と怪しい英語で、松下に抱きついて、キスをした。

大介は、「俺にしろよ!」と思い、彼女を見つめた。精一杯の子供パワー。

が、ロシア人女性は行ってしまった。金運はあるが女運の無い俺。金運が無いが女運のある親父。

その金も女性に、もっていかれてしまった。

大介は落胆したが、精一杯の強がりを言ってみた。

「それにしても、このゲームは随分ラクに勝てるね」
「それなら、明日、もう一度来よう。普通は、こんなに勝てない」
「もういいよ、俺、このゲーム、つまんないから。家でプレステでもやってるよ」

 

 


「ご子息にお金の教育ですか。良いお父さんですね」

「それが、違うのよ。奴は良いところを見せたい。仕事が好きで、家にいると、ゴロ寝ばっかりしてるから。

この前なんて、俺の人脈、とかいって、息子にフェイスブックを見せたりして、しょうもないのよ」

ムネオランドは、中間層を狙う、観光、などとズレたPRをしただけあって、何をしに来たのか分からない、変な客も多い。

よくあるのは、同伴者がカジノ好きで、片方は全く賭博に興味がないとか。

カジノ好きは放っておいても金を使って帰ってくれるが、

同伴者の方は、手持無沙汰で店内をうろつき、帰ってから周囲にいろいろ評判をまき散らす。

目の前の40前後の女性は、「変なゲームに血眼になるバカは放っておいて、イケメンとお昼ごはんでも食べようかしら」っていう感じ。

山川は、自分の母親がそんな感じだったから、憎めない。

父親はあまり家に帰ってこず、外に女がいたとか、いなかったとか。