ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Кури́льские острова́6


トランプ・ホテルの最上階は葬式だった。

身なりの良い男たちが、トドみたいにソファに沈み込んでいる。

今日のスキラッチたちは、シシリア・マフィアに絡まれたりするだけで、ほとんど勝てない。

スキラッチはマネロンして帰ってくるつもりが、手ひどく負けて、単に金が消えただけなので唖然としていた。

宿泊代を、前払いにしておいて、よかった。


何だココ、チートとかしてないのか。

ここは、ラズベガスの老舗に、プーチンが無理やり噛んだ、とかいう謎カジノだった。

確変や当たりの仕様がどうなってるか、サッパリ分からない。

マニアの作った同人誌で、攻略本が出ているが、本によって、書いてあることが全然違った。

プーチンは、アメリカの大統領選挙期間中に、投票所をハッキングしたり、変なテクノロジーにご執心だ。

一週間前。

 

 

「鼻毛も凍る、シベリアカジノ」

ガスコは、エアロフロートの旅行代理店のチラシをピラピラさせた。

「ココがロシアで唯一、マネロンが出来るところだって言うのか、お前は」

「そう、好きなだけ換金しても、ガスプロムの社長みたいに、監獄に入ったりする必要はないみたいですよ。

ただ、当局にマネロンの事実は把握されちゃいますけど」

「それで一生KGBの犬だって?」

KGBの犬、いいじゃないですか。

最近は、政府にタカらないと商売にならないでしょう」

「政府が例えば、何の仕事をくれる?プラウダの造反ジャーナリストを殺すとかか。それで報酬は、ナシ」

「でも俺たち、殺しが趣味じゃないですか。

それで、国境付近に湧いてる、チェチェンゲリラや、チャンコロたちを駆逐できるっていう寸法、悪くないよ」

 

スキラッチは、テーブルの上に、着替えと一緒に投げてあった「鼻毛も凍る、シベリアカジノ」というボロボロになったパンフレットで、鼻をかんだ。

「駆逐も何もなかったな。

奴らを撃って金を奪うとかなら、俺たち得意なんだけどな。

全く、金の扱いは難しいよ」

 

 

「うわ、寒。何かもう、早く帰ろうよ」

「島民が帰りを望んでいるとか、俺は本当だとは思えない。

俺だったら、こんなところに帰りたくない。

土地の余った過疎村に入って、大麻でも栽培して、日向ぼっこして寝てる」

「のっけから、否定しないで下さいよ。

ペンギンにも冷蔵庫を売るっていうのが、商魂じゃないですか。先輩たちは、腐敗してますよ」

「いや、逆に、じゃあくれたっていいじゃんと思わない?この土地。誰も使わないんだろ?」

MUNEO駅は、豹柄のコートを着込んでいる人もいれば、乞食みたいな身なりの人もいた。

黒髪にグレーのコート姿は珍しくないのに、ジャパニーズ・サラリーマンと指を指されるのは何故なのだろうか

加藤たちは、これまででもう5回くらい、通行人に「オカネカシテ」と言われた。

その後、「ビジネス、ビジネス」とかいう人もいた。

三つボタンのスーツを中に着込んだ、コワモテのオッサンだ。負けたのか。

何がビジネスなのかは不明だ。

通行人の多くが、大きなキャスターでスーツケースやジェラルミンの箱を転がしている中、

彼らのブリーフケースはピラピラだった。

お金なんか入っていない。

遠くを眺めた加藤の目に、ロシアの軍事基地が目に入った。

え?ロシア?米軍基地じゃないの?自衛隊かも?

っていうか、アレ、グーグルマップに映ってるのかな?

もしかしたら、模型で、ただのマフィア対策なのかも?

騒ぎを起こしたら、即制圧するという脅しだ。

「しょんべんが凍り、砲弾も凍る。こんなところで、軍事訓練が可能か?」

「北国に攻め込むみたいな想定があれば、やるしかないじゃないですか。

雪、分かりません、穴に落ちました、とか言ってる場合じゃないし」

「冬将軍って怖いんだろ。ナポレオンもビスマルクも雪に埋まったとか。史上、攻略できた例とかあるのか?」

「先輩の知識はいろいろ可笑しいと思うんですけど。チェチェン・ゲリラとか」

チェチェンは山奥じゃん。

ロシアが攻める側にせよ、守る側にせよ、天然の要塞は崩せない。つまり戦争は、起きない」

「アメリカが、バンカー・バスターとか作ってるじゃないですか。火炎放射器で雪が溶けるとか」

「それに、ロシア人にとって、ここは温かいんですよ、むしろ南の楽園かもしれないですよ」

「じゃあロシアから客来る!ってことは、日本人の客は来ない!ってこと?だったら、ロシアが持ってた方が、いいよね」

「メンツの問題があります。

そうやって領土を分割していったら、シャレにならないし」

「でも、ロシア人って、商売が下手じゃん。密造酒とギャル以外に、何かあるか?プーチンのブロマイドを、女の子とホモに売ることか?」

風間はギクっとした。

風間はさっき、土産物屋でプーチンのブロマイドを買った。

空軍の帽子をかぶってるやつと、柔道着のやつ。

家族には、キモイとか言われるに決まっている。

こういうのは、渡した瞬間、一瞬笑えるだけだ。

そのあと、置き場に困る。

しかし最近、家族にキモイと言われることが、彼の倒錯した喜びだ。

それか、社長に上げようかな?彼は独裁者が好きだ。社長は自分で自分のことをイケメンだと思っているし、通りがかりの女性が振り向くこともある。

「だから、永久凍土の人にしかわからない娯楽とかが、あるんですよ。マフィアを穴に落とすとか」

「始めから否定するのを止めて下さい。せっかく新規事業の看板がついているのに、左遷されたような気分になってくるし」

「事業って何なの。で、俺たちは、何を調べて帰ればいいんだっけ?積雪が何センチってこと?」

「そうですね、この雪の下にインターネット回線引くとか、まあ、そんなオイシイ公共事業は、日本人には回ってこないと思うけど」

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