ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Кури́льские острова́8

 

松下と大介は、セルフサービスのミネラルォーターを飲んでいた。

「パパは勝てない。俺は勝てる」

松下は、今日の勝負に、文句を付けたくてたまらなかった。

運が悪いのはシャレにならない。かなり負け犬臭が漂う。

現実の松下は、負け犬とは程遠かった。

彼の職場では、目ではないほどの札束を扱う。

そういう彼だからこその、息子へのお金教育だ。

「アレだよ、その辺のお姉さんを捕まえて、俺は勝つって宣言してみろ。

勝ったら半分上げるとか。そうしたら、後ろで見ててくれるから。

そうしたら、お前は勝てない。お前はそういうシチュエーションに弱い」

松下は、最近、大介が、近所の女の子に振られたことを知っていた。

彼女が、予想外におしゃべりだったからだ。

大介は、父親の性格の悪さが出世の秘訣なんじゃないかと疑っていた。

「パパは、女がいてもいなくても、負けるんだろ。俺は女に弱いだけ」

大介は、プイと横を向いた。

俺は絶対、将来金持ちになってやるからな。女は金についてくる。

松下は、妻がずっと美青年のスタッフと話し込んでいるので、息子に絡んでいた。

 

金正雲シベリア鉄道で殺される」というニュースが出た。

それは誤報だった。

金正雲はあいかわらず、平壌のふかふかのベットの上で粛清リストに目を通していた。

 

 

 


「お前、また死体埋めるの?それが金正雲ソックリさんってやつ?
でも、あんまり似てないね。同じなのは髪型だけ」

プルーシャは足尾がソリで引いてきた死体を覗きこんだ。プルーシャは常連客だ。

「お前は、また負けたのかよ。金がもったいないから、そろそろ足を洗えばいいのに」
「何だよ。店内にいるときみたいに、お客様、飲み物はいかがですか、とか言ってくれ。
お前の接客は最高だよ。王様みたいな気分になるし、いろいろ分かってる」

「気持ち悪い事言うなよ。蹴り入れるぞ。だいたい、賭けをやる金があるなら、ガールズバーとか行けばいい。お前は不健全だし、どこかの姉さんにヤキを入れてもらえ。

金髪の姉さんでも、黒髪の姉さんでも、好きな方でいい」

「お前は非番のとき、そういうところに行くのか?」

俺には必要ないから、とは言えず、足尾は黙り込んだ。ここの稼ぎは良いし、家族との生活は安定していた。

「お客様、お客様のお顔は、死んでいます。お客様、お客様の人生は終わっています」

プルーシャがつぶやきながら、金正雲(似)の死体をつついている。

ソリの死体の横に、シャベルが3つくらい載っていた。

足尾は、シャベルの1つを取って、雪を掘り始めた。

「埋めちゃうのか、コレ。フーン、金正雲のソックリさんなのにな」

「だって誰も葬式とかしない。

火葬にしていいのか、土葬にしていいのか、わからないけど、

火葬場使うのは、火力がもったいないとか役場に言われるし、この辺の土地はまだ埋めるところが残ってるし」

「教会に行ったらいいじゃん。奴らは他に、仕事しない。人が死んだときくらいしか」

「あとで神父さんは呼ぶけど、参列者は来ないよ。遺族や知人は、いるかもしれないけど、誰に連絡していいか、分からないし」

金正雲ロシア正教でいいの?」

「じゃあ坊さんと神主も呼んだ方がいいのか。俺は良くわからん。なら、全員呼ぼう」

「雪が解けると、腐乱死体が出てくるよ。しっかり埋めないと」

「1つ埋めると、3000コペイカ。半分やったら手伝う?」

「手伝うのはいいけど。でも、俺、どうせギャンブルに使うよ。そうすると、
母さんは、お前を、そんなことをさせるために育てたんじゃありません、とかいって怒るじゃん、お前」

「言わないよ。お客様、ご案内いたします。飲み物はいかがですか、って言うよ」

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