ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Кури́льские острова́9

 


雪解けの頃になると、死体がいくつか出てきて、物議をかもした。

プーチンが怒ってる」

国後の市会でこのセリフは多用された。

見た人の話によると、プーチンが怒ってるかどうかは、見た目では分からない。

便所に隠れていても引きずり出してやる、くらい言われないと、分からない。

でも、ロシアでは、プーチンに会った、という詐称自体が横行していた。

北方領土=南クリル諸島のカジノは、作ってからも延々、

24時間営業するとかしないとか、規模を縮小するとか、どのくらい宣伝を打って、どのくらいの客を見込むのか、いつも紛糾していた。

とくに死体が出てきたり、来客のマフィアが殺傷沙汰を起こすと、その声が高まった。


「カジノは不道徳です。キリスト饅頭に、キリストの指、そういうのを売るんですよ」

「結局金じゃないですか。カジノと大して変わらないですよ」

ロシア正教のイコンをつくって、記念品として売るとか」

「そういう少数民族っぽい生業は、潔くないよ。俺たちは少数民族じゃない。そんなこと言っていたら、世界は少数民族だらけになっちまう」

「俺は逆に、少数民族ってことにしておいた方が良いと思うけど」

ロシア正教のイコンは、子供でも作れそうな雑な作りをしていた。アボリジニのアートとか、ああいうやつ。

最近は少数民族博覧会、みたいなコーナーを作って、インディアンやアボリジニなど、出店しているところもあった。カジノは人が来て、記念にくだらないお土産を求めて帰っていく場所だ。

ロシア人と日本人の交流の地なのか、少数民族の居住地として売り出したいのか、コンセプトはハッキリしない。

彼らは市会などで、決定権を持たない。

「でもプーチンって、マフィア好きですよね。客層が合わないことは無いのでは?

シシリアやギリシアのマフィアが向こうから来てくれるから、内心、手間が省けたと思ってないか?」

「彼は愛するロシアのマフィアしか好きじゃないかもしれない。シシリアマフィアなんか、焼肉にして食ってしまいたいと思っているかもしれない」

「焼肉にして食いたいなら、そうしたらいいじゃないですか。彼がそうしたいなら。プーチン特製手料理とかいって出せば、人が来るかもしれない」

 

 

 

MUNEOは、一時期収監されていた。

彼の頃の北方領土=南クリル諸島では、何をやって良くて、何をやってはいけないのか、法律がハッキリしていなかったからだ。

MUNEOは北方領土の住人との関係で、根回しや世論の説得に奔走したが、

その果実が、彼らの支持者に落ちたとはいいがたい。

ムネムネ会は、多くの政治活動の傍ら、民生委員のようなことをしていた。

不可避的に、ここへやってくる胡散臭い人々と、なるべく接触を保っておいて、犯罪を起こしたり、地下に潜らないようにしてもらう。

日本はずっと、閉鎖的な社会だった。

ヨソモノの彼らは、北海道方面に流れ着いて悪さをすることがあるので、

抑止力になるべく、親しくつきあっておくことが大事だった。

客にせよ、マフィアにせよ、出稼ぎ労働者にせよ。

MUNEOさん伝説ッスよね、俺もMUNEOさんみたいになりたいッス、みたいな変な奴が増えた。北の防壁。

 

 


「私はロシア語のネイティブです。日本語チョット。何かお役に立てることが無いかと思って」

ニーナは、英語で話した。ここのスタッフは皆、中学生レベルの英語はできた。

「お給料少ないですよ。私たちはほとんど、無給でやってます。大丈夫でしょうか?

ニーナさんは、出稼ぎしていて、お金が必要なんですよね?

もっとお給料のいいところを紹介しましょうか?」

「あんまり給料のいいところは、何かアレっていうか、ロシアンパブとかは、やらないです」

「そういうのは、俺らは紹介しない。そういう奴らは、柄が悪いから、後で面倒くさいことになるし」

先生は一度、捕まったことがあるから、とは、MUNEO部下1は言えなかった。

未成年と淫行とかじゃない、しかし領土荒らしっていうのも、あまり聞こえの良い罪状じゃない。

友好と侵略の線引きは曖昧だ。そのとき友好がなりたっていても、あとから侵略だと言われたら、終わりだ。

 

 

 

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