ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Кури́льские острова́10

 

「ロシア語の通訳とか、客がきたときだけだから、稼ぎは良くないかもしれないけど、あまり人がいないから」

ニーナは別に借金とかはなかった。

弟が専門学校へ行きたがっているので、地元に細々と仕送りをしていた。給料の半分は、自分で好きなものを買った。

面積の小さすぎるサウナ用のビキニとか、紫のリップスティックとか、失敗して、同僚に上げてしまったものも多い。

でも、そういうチープなコスメやワンピースで、一週間くらい働く気力が湧いた。

ロシアの田舎に、そういうものはあまり売っていない。

「トランプも俺らも、従業員に、大した金を払っていない点では、文句をいえないよ

ここの給料に比べたら、あんたのいたトランプ・ホテルの方が、ずっといいよ。

ベガス直伝のカジノなら、もっと給料がいいんだろう。

誰からムシりとろうが、金は金だよ。相手の迷惑を考えないんなら」

「MUNEOさんは、一度捕まってるから、あんまり大っぴらな賭博ができねえズラ」

「アレは賭博じゃないよ。全うなビジネスだ。貧しい島民に、生活インフラを敷いた」

「国境線は賭博ですよ、いつだって」

国境線の賭博に、翻弄される身。

彼らの進める通り、ニーナはしばらく、ロシア語通訳の派遣をさせてもらうことにした。

 


「お前ら、シベリアくんだりまで行って、成果なしかよ。蟹の取引を牛耳るとか、何かないの」

松下ら、財務部の人々は、加藤たちが、お土産に持って帰ってきた饅頭を食べながら文句を言った。

プーチン饅頭。彼の整った顔立ちは、饅頭に似合わない。何となく不味い気がする。

ムネオ饅頭というのもあって、そっちも微妙といえば微妙だが、ムネオ饅頭は他の社員が取ってしまったから、松下には、プーチン饅頭が回ってきた。

「あくまで視察でしょ。めぼしい話があったら社長連れてきますから。

あんな辺鄙なところ、100回くらい行かないと、商売のネタなんか見つからないですよ。

元々、エンターテイメント関連は、ラズベガスの大御所が牛耳ってるし」

「ラズベガスって言っても、少しプーチン仕様なんだろ。

スロットの裏ロムの仕様にまで、自己流をねじ込む手腕はバカにできないよ。

日本も何か、ないのか。

日本の北端に、チンケなパチンコがあるだけじゃ、情けない」

「チンケだけど、中国共産党の、次の雛壇幹部を当てるのありますよ。忙しくて行く暇なかったけど」

「それ、俺もやってみたい。だけど、雛壇序列は、結果でるの遅くないか、下手をすると3年後とか、そういうのって有効か。

中南海を巻き込む、大型汚職でもあれば、別だけど。

賭博は瞬時に結果が判明しないと賭博にならないよ。

3年掛かりの賭博なんて、それは賭博と呼ばないだろう。それはもう、何らかの作戦行動か何かだよ」

「しかし、饅頭しか土産がないのか、それでも事業部なんて看板をブル下げてるのか、お前」

「松下さんみたいな、財テクで遊んでる連中と一緒にしないで下さいよ。

ここの人たちは、商売のことが、分かってるんですか。

会社の資産のうちの、少しくらい小銭を増やしているくらいで、大きな顔をしないでください。

こんなの、官製市場じゃないですか。この市場で勝っても、勝った気がしない」

「俺らは、ネタがあっても、それをねじ込む手腕はないよ。事業部の方々に、お任せです。頼みにしてるんです」

「ネタがあるなんて嘘でしょう。どうせ株のグラフと帳簿と睨めっこで、金融のセールスマンとダベったり。総務の人々は、自分を買いかぶり過ぎです」

「何で帰国早々、ケンカ腰なんだよ。饅頭、美味いだろ」

加藤が風間を止めに入った。加藤たちの機嫌が悪いのは、出張費が半分自腹になったからだ。

カジノで負けたからと、財務は言った。普通勝てネーヨ、勝率どうなってると思ってるんだ。

まぐれ辺りでもない限り、胴元の丸取りに決まってる。このクソ札束の警備員め。最も単純な部類の、カジノの仕組みもしらないで、株式や経済が理解できているのか。

「今度は、酒とかにしてよ。土産物」

「何でですか。財テク、上手く言ってないんですか。飲んで誤魔化したいくらい。ヒヒヒ」

松下は饅頭を喉に詰まらせて、湯呑に手を伸ばした。

当の自分が、家族とムネオランドに行って、スリまくったなんで、加藤たちには言えない。

あまつさえ、10歳の息子より賭博が下手だとか。

風間は数枚の写真を、デスクの上に置いた。

プーチンのブロマイド欲しい人」

「えー、娘に上げようかな」

「嫌われるよ、怖いし」

「この軍服のモフモフの帽子、可愛いじゃん」

「それ、社運上がるの、下がるの」

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