ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Lehman Brothers Holdings Inc.2


売れ、売れ、売れ、売れ。売りまくれ。

そのときは売るととにかく儲かったし、

リーマンAたちは顧客を、鵜の眼鷹の眼で探した。

収益の上がらないと存続できない、会社の必然性だ。

ただ、クレジット・スコアの無い奴は、除外。借金を返さない奴に貸してもしょうがない。

しかしアメリカ市民の大半は地道にクレジット・スコアを貯めていて、この市場で家を買わないのはマヌケだった。

カスタマー1はマヌケで、カスタマー2はマヌケではなかった。

しかし今は、カスタマー2がマヌケで、カスタマー1はマヌケではない。

カスタマー2は住宅価格の下落で売れなくなった家と借金を抱え、

カスタマー1は身軽に賃貸生活を謳歌している。

カスタマー2は近々、法廷へ引っ張り出される。

 

 

 

市場が暗転して、突然テンションが下がるってことはない。

株が暴落する、債務者が飛ぶ。

知らせを聞いた瞬間は、心臓が凍りつき、血が逆流し、何日か茫然として

雲の上を歩くような感覚に陥るかもしれないが、それは、すぐに持ちなおす。

似たようなテンションのまま、逆方向へ向かって走り出す。

リーマンAたちのフロアは、人々が、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり。

ものの良いスーツの人だけではなく、捜査官なども混じっていた。

リーマンAたちは、捜査官たちを勝手にさせておいた。調べたいだけ、調べろ。どこにも後ろ暗いところは無い。

俺たちが悪意で市場を暴落させたのではないことは、明らかだ。

 


「A地区を荒らすんです。

例えばホームレスや不良少年を送り込んだりして。安いアパートを買取って、彼らを入居させます。

あとは、クラッカーの連中に、何度かハッキングをさせて、電力やインターネットのインフラを止めたり。

そうすれば、あなたたちが回復を望んで止まない、B地区の地価は上がります」

リーマンCは絶句した。誰だ、こんな奴を呼んだのは。俺か。

しかし目の前の彼は、敏腕のコンサルタントだという噂だ。身につけているスーツも腕時計も、恐らく目が飛び出る値段だ。

「あんた、この名刺、本物なのか。

ヤクザ者がエスタブリッシュメントの世界に入り込んで、遊び場にするつもりじゃないだろうね。

その腕時計は、一体、何の金で買ったの。何かマズイものを密輸でもしているのか」

「この債券市場の崩壊を食い止める方法を、どんな手段でも良いからひねり出せといったのはあなたです。

顧客の要望に最大限に寄り添うのが、私どもの使命です。

このバブル崩壊の後始末は、どうやったって不可能です。

A地区を荒らすというネタを、あなたたちが、どう受け取ろうが、自由です。

私は、ただ、現実的にあり得るとしたら、という仮定をしたに過ぎません。

人々はかつて、不景気に苦しみ、塗炭の苦しみを舐め、ヤケになって世界大戦を引き起こし、そこから奇跡の復興を成し遂げた。

歴史的視座を持てば、そういうことが世の中にあると、申し上げたに過ぎません」

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