ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Lehman Brothers Holdings Inc.6


ワシントンへ幇間として放っていたリーマンEが放った一言は、マクスウェルを、打ちのめした。

「リーマンフラフープは、救済されません」

「何故だ?私は、出来る限りのことをしてきたつもりだ。

パフォーマンスが過ぎるとは思ったけれど、恥を忍んで土下座もしたし、

経営陣の年俸10円も取締役会を通した。それは、他の金融機関への風当たりも弱めたはずだよ。私たちは、人身御供になった。力が及ばなかったのか」

古くからのエスタブリッシュメント、ヒュッセルら重役連中は、ワシントンと親睦があるが、

ヒュッセルらに持ち上げられただけの黒人のマクスウェルにそういったものは無かった。

マクスウェルは、ハナから手詰まりだった。ヒュッセルの言う通り、黙ってソファに寝ているのが任務だった。

「その年俸10円っていうのが、マズイみたいです。

そんなことをやられたら、アメリカの資本主義は崩壊する、ということです。

重役連中が、競って年俸を10円にして大衆の関心を買うなんて」

「今年1年だけじゃないか。ただのパフォーマンスだ。

私だって、そんな社会は望んでいない。

私だって人一倍努力してきた。それを否定されたくない。

何もせずに文句ばかりブーブー垂れて、他人の努力をむしり取る連中に、搾取なんかされたくない」

「それを、ヒュッセルさんたちの前で言ったらどうですか。

彼らはマクスウェルさんを誤解しています。

見世物小屋の奴隷か何かだと思っています。群衆の石つぶてを浴びればいいと。ひどいですよ。

ヒュッセルさんたちと、マクスウェルさんは、見た目が違うだけで、能力も、考え方も、そんなに変わらないのに」

「私は見世物小屋の奴隷でも良いですよ。それで社会が良くなるなら」

マクスウェルは本当にヒュッセルの言う通り、ソファに身を投げたくなって、来客用のソファに目をチラっとやった。

「でも、そんな社会は、上手く回らない。私の祖国は」

テーブルにはワシントン関係の書類やメモリが、パソコンの横に積んであった。

この書類集めは二度手間だ。ヒュッセルたちも集め、自分がまた独自に集めている。書類の山は言う、ソファで寝てろ。

「上手くいかない」

「上手くしていけばいいじゃないですか。アフリカ株とか、見つけていけばいいじゃないですか。

今はそういうフェーズじゃないですが、いつか会社が持ち直したら」

リーマンEは心が痛んだ。

マクスウェルが、アフリカの象牙の密猟業者の息子で、彼がアメリカに渡航してきたのは、その闇資金がベースだとか、

マクスウェルはアフリカの内戦の最中に生まれ、本当の親が分からないとか、悪意のある噂が、駄雑誌に書かれる。

リーマンフラフープのオフィスには、そういう駄雑誌を持ち込む人がいた。駄雑誌は、コッソリ回し読みされ、機密書類のラックなどに隠される。

リーマンEのように、マクスウェルの素顔に接している人は多くない。

正規の出世のステップを経ない、唐突なCEOへの抜擢。彼を怪しむ人は多い。バーマオ大統領の親戚じゃないかとか。

 

 

リーマンAたち、リーマンブラザーズは、創業者の縁戚だが、何かつるんでいるとか、

マクスウェルの特務をしているとか、逆にヒュッセルたちの腰ぎんちゃくをしているとか、そういうことは一切ない。

身内のニューイヤーズ・パーティーみたいな場に来ると、彼らの情報交換は混乱を極めた。

誰が誰の指令で動いているのか。指令を出している人の思惑は何か。

この中の誰がやっていることが会社の為で、何が無駄撃ちなのか。

創業者のリーマン兄弟は、息子に社長の座を譲らず、他から人を入れ、今はチラホラ、縁戚の人たちが、コネ入社するだけの状態。

ここにある豪華な食事の多くは、リーマンフラフープからの稼ぎで調達されている。

彼らのパートナーはいろいろだった。

企業弁護士だったり、同業者だったり、スーパーモデルだったり、好みが反映されるが、好みのパートナーが選べないということは、まずない。

間違った相手に、一途な恋などをしない限り。

彼らが一途な恋をしていないとは言い切れないが、身辺には、あまりに金目当ての人間が寄り集まり、

何が一途な恋で、何が一途な恋でないのか、判別するのは難しい。

それに、一途な恋なんて、ストーカーと同じだし。何事も、ほどほどに。

サーブされた食事は概してベジタリアンふう、

昔みたいに、血の滴るステーキやキャビアみたいなものを、ガツガツ食べる人は少数派だった。

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