ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

イケメン・ツァーリ5

 

「ライウクナのマフィアが、市議の親族のヒラの警官を殺した?それがどうかしたか?」

「ライウクナの奴らは証拠隠滅が上手いです。それにライウクナの紛争には、アメリカが一枚噛んでいます。

だから、あんなに事態が長引いているんです。それで、その市議の殺人容疑が、俺たちに掛かっています」

「いくら俺たちがシロだからと言って、調べてもらえば良いってわけにはいかないな。

俺たちは市議は殺してないかもしれないが、ガサが入ったらマズいことが腐るほどある。

お前なら、どうする?一度畳んで書類を燃やし、どこかへ逃げて再起を図るか」

「俺はボスほと頭が回りません。

俺たちのやってきたことがマズイのは確かです。対策が必要です」

「だからその対策を考えろって言ってるんだよ、ウスノロが」

ボスはイラついていた。優しい牛は、あいかわずパンツの内ポケットに録音機を入れていたが、これも大した証拠にならないと思った。

市議を殺したライウクナのマフィアは恐らく、ライウクナに隠密にアメリカの武器を流していた。ただ、それは優しい牛の担当でないから、詳しいことは分からない。

いずれにしても、警察にガサに入ってもらうことは必要だ。

殺しとかそういうことは、ヒラリーのNPOには手におえないし、優しい牛自身の手にも負えない。

 

 

 


「ねえハニー、最近、ママと口聞かないじゃない。何か都合の悪いことでもあるのかしら」

何一つ不足のない食卓。

ソ連が崩壊して、極度の物不足やマフィアの横行、戦乱に巻き込まれる前のルシアで、家族とボルシチを食べていたのと似たような、一家団欒だった。

綺麗な英語を話す子供たちと比べると、少し怪しいターニャの英語。

アンソニーはから揚げをフォークにさして口に放り込み、しばらくもぐもぐと口を動かした。

祖父の代からの古時計の時を刻む音が、リビングルームに響いていた。

息子は一家の視線の集中と、食卓の沈黙に耐えかねた。

「トニーが俺のことビッチの息子とかいうんだよ」

夫婦の食事を取る手が止まった。ケイティがプッと吹き出し、ターニャに睨まれた。ケイティは笑った拍子にサラダを喉に詰まらせて、咳込んだ。

「あんたはビッチが何なのか、知ってるの」

アンソニーはから揚げをつつきながら、チラチラと両親の顔を窺った。姉にテーブルの下で足を蹴られた。

「ビッチは、ビッチだろ。誰とでも寝る奴だよ」

「ママはビッチじゃないわよ。ママが他の男と寝ているところを、一度でも見たことがあるの」

「トニーは、ママは絶対にビッチだって言ってた」

「じゃあトニーのママはビッチじゃないのかって聞いてきなさいよ」

「ハハハハハ」

ハワードは大笑いすると、テレビのスイッチを付けた。

 

 

 

 

「随分、綺麗な姉さんだな。婆さんにいじめられてないんかな?」

ヒラリーの顔なじみの刑事が、カーチャを見て、目を丸くした。美しいストレートの金髪に、上品なスラブ系の顔立ち。

ここの来客に、彼女を振り向いていく人は多い。

ルシア人は若い頃はだいたいこんな感じだから、カーチャは、とくに綺麗とか何とか、などと言われたことは無い。

とくにルシーアマフィアはルシアの田舎で美しい女を選んで、トラフィッキングの対象にしていた。

俺たちは、娘さんにアメリカで就業させてあげることができます。仕送りも入ります。良い話ですよ。

一家離散の多い戦乱地区も狙い目だった。ヒラリーが奥のデスクの席を立った。

「いじめてるのはあなたよ。何しに来たの。

あなたたちのガザツな取り締まりのせいで、またルシア人女性の死体でも上がったの」

ブラッドリーは、この中央街の治安を担当する、ベテランの刑事だった。

彼らは、警官の常で、マフィアとはある程度癒着しているし、全面追い出し作戦などは、なかなかしない。どのグループのマフィアであろうとも。

「そんなに簡単に死体なんか出てこないよ。

ああいうの、マフィアは商売でやってるんだ。

そうやすやすと、自分の商品を傷つけたり、死体になんか、しない」

「私たちは、立場の弱い女性から、自由をはく奪して、小銭をむしり取るのが、違法だと言っているのよ。

男なら、自分の体で稼ぎなさいよ。チンカスが。

あなたは、死にたくなければ、奴隷になれと言われて、納得できるの」

ブラッドリーはヒラリーの剣幕に肩をすくめた。確かに奴らは、チンカスだ。ロクなことをせず、アメリカ社会を荒らすだけ。ブラッドリーだって、軽蔑していた。

「彼女たちに、アメリカ国籍は無いよ。

あんな商売にそうやすやすと、就労ビザは出ない。

ただ、アメリカの男と結婚しちまったら、別だけどな」

 

広告を非表示にする