ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

イケメン・ツァーリ6

 


メモリのコピーを取った後、ヒラリーは優しい牛の録音テープを、親しい刑事のブラッドリーに渡した。

ヒラリーのNPO組織が、独自にルシア・マフィアへスパイを入れていることは、ブラッドリーにも話してあった。

アメリカの警官とルシア・マフィアの癒着が全くないとは言えない。

昔から、ある種のマフィアは、人手の足りない警察の代わりに、チンピラ連中の暴発を押えていた。

かつて、イタリマ・マフィアの映画、ゴッド・ファーザーはどうして世界で流行したか。

善良な人々から文句の出そうな、100パーセント正当化しきれない必要悪を代行する、便利屋みたいなもの。

紛争地区のテロ組織や、昔のヤクザまで枚挙にいとまがない。

それで結局、マフィアが力を持ち過ぎて、不法行為が拡大していったり、マフィアと警察はいつも縄引きをしていた。

一蓮托生ってやつ。そういうことをしているから、人相が似てきて、マフィアと区別がつかない警官も多い。

そういうところは、ヒラリーは警察と全く相いれない。

警察はある程度、男尊女卑的な組織だった。

男性と同じ任務を果たす女性警官を認めるにやぶさかでないが、街頭に立つようなだらしのない女は、野放しにしておくわけにはいかない。

警察の支持基盤は、ピューリタンが多い。

だらしがないだけではなく、立ちんぼは不法移民の温床にもなっていた。

そういう退廃現象を、警察が全て管理するのは無理だから、彼らはマフィアと手分けした。

ただ海外の新興マフィアとなると、話は別だ。コロンビアや中国のマフィアは、既に警察の手に余り始めて久しい。

彼らの勢いは、麻薬取引や経済力をバックに、とどまるところを知らない。

彼らは中国の不法移民やコロンビアの貧民の味方とはいえ、アメリカ当局には敵だった。

ルシアマフィアは、対抗勢力として利用された。

ヒラリーーはブラッドリーをある程度、信頼していた。その辺のゴロツキ警官とは違う。

マフィアのトラフィッキングの監視を担当しているし、彼がルシア・マフィアから裏金を貰っていないことは、インターネットや市議連中への噂からハッキリしていた。

ただ、優しい牛には、念の為、100キロメートルほど離れた街に、潜伏するように言った。

この件が警察に漏れたからには、「ルシアの鷹の爪」で犯人探しが始まる。

優しい牛は疑われて、マフィアに処分される可能性が高い。情報提供者は守るのが、最低限の仁義だ。人を使い捨てにするマフィアとは違う。

 

 

 

「お前、俺のママはビッチなのかどうか、聞いて来いって言ったよな」

プレステの電源を入れながら、トニーが言った。アンソニーが持ってきた新作のゲームソフト、中央街まで遠征して買ったやつだ。

アンソニーは飲んでいた変な粉のジュースのコップをトレイの上に置いた。真っ赤なジュースだ。唇まで赤くなっていた。ゲーム店の近くの変な駄菓子屋で買った、粉末のイチゴソーダ、コレは失敗作だ。

俺はもう飲まない。お前にやるよ。

「言ったよ。先に俺のママをビッチ呼ばわりしたのは、お前だよ」

「お前のせいで、ウチがヤベー雰囲気になっちゃったじゃないか」

「シラネーヨ。俺は父さんがいるところで聞いたけど、別にヤバくならなかったよ」

「マジで?父さんがいるところで聞いたのか?お前根性あるな。ビッチを何だか知ってるのか?」

「誰とでも寝る奴のことだろ。うちのママは違うんだよ。お前のママそうだって言ったのか?」

背後で、ドアが開く音がした。

気が付かないうちに、トニーのママが後ろに立っていた。

2人はマジヤベエーて感じで硬直した。

画面から、テレビゲームのオープニングミュージックが流れてきた。耳慣れない音、このゲームはアタリなのか、ハズレなのか。

 


トニーのママはアメリカ人、アンソニーのママはロシア人だ。

2人の見た目はそんなに違わないし、子供たちは英語を話すから、そういうことを意識する機会は少ない

トニーのママは壁に手を付きながら、けだるそうに言った。ママらしくない、街にいるギャルみたいな仕草だ。アンソニーはドキマキした。

「ママはビッチじゃないし、ターニャもビッチじゃないの。分かった?」

広告を非表示にする