ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

AIIB丝绸之路=印度=铁路8

 

ナジームは何事もなかったように、駅へ戻ってきた。

人事部へ向かうと、ナジームは、音声データをファンへ渡した。

統括部長のファンは、テロの予告があってから、ずっとこの駅に駐在していた。元は、本社の人間だ。

少しでも身の潔白を証明しようと思い、
ナジームは、自分の会話を、ずっと録音していた。

もちろん、サルマとの最後の会話を除いて、だ。


「サンジャイくんは、当社の運行を、クロック・タイマーみたいで殺人的だって言ってるね。

彼は、地方の小さな領主のご子息だ。気持ちは分からんではないよ。

中国に、そういう人はいないけれど。中国では皆、忙しく働いています。

人は、ヒマだと、面白くないことを考えるからね。チベット人とか、ウイグル人とか。

私はナジームくんは、そういう、テロリストの仲間だとは思ってません。

ナジームくんは、サンジャイくんの意見に賛成ですか?」

「僕はシルクロード=インド鉄道は、素晴らしいと思います。

ただ、インドでは他の新興国と同じく、労働者の使い捨てが蔓延っています。

従業員の昇格を認めず、契約を1、2年で切って再雇用します。

インドは余剰人口が多い。誰かを使い捨てにしても、次から次へ採用すればいい。

そういう企業収益の上げ方が、蔓延しているんです。

僕が組合活動をしていたのは、もう少し、従業員の生活や健康を、考えてもらいたいからです。

インド=シルクロード鉄道を吹き飛ばしたいとか、そんなことを思ったことはありません」

 

 

サルマは、憮然として、休憩室に座っていた。隣のパイプ椅子には、オレンジ色のサリー姿の女性が座っている。

彼女の手が触れる。手首が、手錠でつながっていた。

サルマは、この女性と手錠でつながれているところを、地方駅の駅員に目撃され、そのままデリーへ戻された。

手錠は、車内で、この女を押しのけて前に進もうとしたときに、掛けられたのだ。

性犯罪対策の仕事だと、サリー姿の女性は言った。

「キミは、スピークアウト・インディア、ってやつだろ。

アウトカーストの人権を求めたりする。

良くコルカタでもデモをしてる、っていうか、乞食が屯ってるだけにも見えるけど。

人は見かけによらない、ってやつだ」

人事部長は向かいのパイプ椅子に腰を下ろして、タバコを吸っていた。禁煙の張り紙の真横だ。

サルマは顔を逸らした。自分の吸う煙草は上手いが、他人の煙は鬱陶しい。

「はあ、だから何ですか。俺は、その組織知ってますけど。親父が入ってたから。

俺は関係ないですよ。関係ないからこそ、鉄道員になったんだし。

鉄道員にカーストがありますか?

ここの採用で、セキュリティチェックが煩いのは、部長も知ってるでしょう」

「ここだけの話だけど、私とキミは似ているようで違う。

私はバラモンの末裔として、不自由ない教育を受けてきた。

だから、その私が人事部長で、アウトカーストの君は駅員だ。

カーストは、教育や所得の格差として、このインドに影を落としている」

「はあ、それ自虐ギャグですか?今はもう、21世紀じゃないですか、そしてここは、世界を代表する、21世紀的企業ですよ」

「中国人は、そういう話が好きなんだよ。

イギリスは、支配の為に、カーストを温存した。イギリス自体が階級社会だし、大英帝国はピラミット構造だし、

私はそういうウンチクを披露して、あの目の細い上司たちに気に入られて、この椅子に座ってるんだよ」

「アウトカーストっぽいですよ、そういうの。

親父が、そういう感じでしたから。

バナナマンたちは、そういう話が好きなんですか。

俺も中国人に気に入られますかね?シット、今逝ったことは忘れて下さい。人事部長」


サルマは、メモリについて知っていることを、人事部長に、そっくりそのまま白状した。

それは、カシミール紛争における人民解放軍の出方がシュミレートされたもので、ナジームから受け取ったものだと。

人事部長が、何故カーストの話を持ち出したのかは分からない。

サルマが、テロリストかどうか、探り出す為か。

 

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