ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

金1

 


とりたてて人に言いふらしたいことではない、むしろあまり人に知られたくない。

うーん、将来性がないっていうかー。

ファー。

香田は、結婚を考えていた彼女に、他の男に乗り換えられて、クサクサしていた。

側にいて当たり前だった人が急にいなくなって、香田は存在不安に襲われた。

仕事を終えても1人になりたくないので、夜の雑踏へ紛れ込み、知らない店へ入った。

知っている店に入ったところで、返済の方、滞っているので、お早めにお願いしますね、とか、いつも言っているので、気まずいし。

銀行員の彼は、昼間の酒場しか知らない。


香田は酒の力を借りて、呪文を唱えた。

こんな不安は一時的なものだろう。自分たちだって融資先を選別して、将来性が無いと見極めたら、切っていくではないか。

そう、ラーメン屋のオッサンなんかは、自殺したって噂で、何故香田がその噂を耳にしたかというと、オッサンの遺族が香田を名指しで、銀行宛てにクレームを入れてきたからだった。

人殺しとか何とか。

そんな噂は行内にありふれているので、すぐに消えてしまったけど。

ずっと返済ペースの滞っていたビルの間貸し屋も、この間、切った。

1991年のバブル崩壊で、どこもかしこも不良融資先が溜まっていた。

それが金を返さない彼らのせいとはいいきれず、かといって香田のせいでもない。クソゲーっていうのは、だいたい、そうやって終わる。

いや、まだ終わってないが。バグを取り除くのは、かなりキツイ仕事だ。

この銀行に、ATMのシステムを作りに来ている、エンジニアの向井とかに言わせると。

それで、香田は、前の担当の方は良い人だったのに、あんたは悪魔だとか、さんざん罵られたけど、

その先輩はリストラされたから俺に担当が回ってきたんだし、

不良融資先をいつまでも切れないでいるようなお人よしなオッサンだから先輩はリストラされた。

だから、担当が俺みたいな悪魔に変わったのは、あなたのせいなんです、オジサン。

香田は、伝票を取って席を立った。悪酔いしていた。

 

 

 

子供が物影から、ヤバイオッサンっていう目で箱崎を見ている。

箱崎さん、どうでした?私たちにも、少しは首の皮がつながる可能性があるのかな?」

工場のオヤジはおどおどと封筒を差し出した。箱崎に懐いている町村、水に落ちた犬としか表現の仕様の無い、往年の敏腕経営者だ。

最近の箱崎は、こんなはした金を受け取らないと生活していけない。

町村としても、こんな手段は望んでいないから、箱崎に金を差し出すその姿は卑屈だ。

これでも、必死にかき集めた金と言う感じ。

「とりあえず脅しておいたよ、相手の出方によると思うけど、何もしないよりはマシなんじゃないかな」などと口から出まかせを言ってしまい、箱崎はますます暗い気分になった。

知るか。どこかから、足がついて、捕まるかもしれないし。

でも箱崎は町村の金がないと当面生きていけない。

やったのは箱崎だから、町村は捕まらない。

が、サクラ銀行からの融資が途切れれば、町村の一家は路頭に迷うことになる。

打ちひしがれた町村、

彼の奥さんと2人の子供が、まさに身を寄せ合うという感じで箱崎と町村を見ている。

 

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