ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

金3

 

同情するなら金をくれ、というセリフが子供のころ流行っていたドラマにあった。

戸川が担当している融資先の彼らには、会社員のように、毎月決まったお給料が出るわけではない、

銀行が融資しなければ、彼らの家族や従業員は、路頭に迷う。

「キミの抜擢は見込み違いだったのかな。

古宿支店は、不良融資先の整理が一向に進まないんじゃないかね」

1990年代にガタガタになった銀行は、財政健全化を焦り、継続してしかるべき融資を切って、多くの人を路頭に迷わせた。

それも、政治と癒着しているとか、誰かが銀行のスキャンダルを見つけてきて脅すとか、

そういう恣意的な基準で融資を切ったり、切られなかったり、することがあった。

銀行が、正しく未来を予測して人々に融資をしなければ、経済は死んでしまう。


「でも例えば、このショーエーっていうのはどうなんですか」

「ここは政治案件なんだよ。知らないわけじゃないだろう。産業大臣とパイプのある皆川さんが、取り仕切ってる」

「コレはでも、報道陣や業界新聞に一度書かれたことがあります。

ショーエーの帳簿がおかしいことは、良く知られています」

「キミはどうにもならないことを弄繰り回すのが好きなのかね」

「申し訳ありません。一応、注意喚起の為に申しあげました。気を悪くなさらないで下さい」

外川は広報出身だった。だから世論には敏感だ。

重役連中は、閉鎖的な業界の風潮に染まり過ぎ、それが世論から乖離していって、

何かの拍子にマスコミから一斉に叩かれると、収拾がつかない。それでいて彼らは寝耳に水みたいな顔して、、広報にクレームを入れてくる。

 

 

 

 


いや、彼女である。違う、これはただの、そう、3日ほど連続で酒を奢った相手に過ぎない。

巷の失業者に対する、ボランティア活動っていうの。

ほら、新卒で就職先がないとか、同期にもたくさんいたから、何となく身につまされて気の毒だし。

でも、そういう場合ではないようである。香田は頭が真っ白になっていた。今、クビになったらボランティアもできない。

ボランティアどころか、自分は出世組に入るつもりなんだし。

「写真は見たところ、香田さんに見えるし、こっちの手紙には、名指しで書いてあります」

確かに、戸川の指差した先には、香田の名前が書いてある。

クビ。だって、自分だってするね、部下の野郎がそんなことをしでかしたら。

香田にハレンチ写真を見せてきた目の前の上司は、怖いというより、心配そうな顔をしていて、

それが女性上司の良いところと言えば良いところなのだろうか。彼女の性格なのか。気遣わしげなのは見た目だけで、腹の底ではすでに俺を切っているのか。

彼女は、こういう穏やかな人当たりで、この若さで支店長になっているのだし。といっても、香田とは10つくらい違う。

「どういう趣旨の封書だったんですか」

香田は一応、伺ってみた。

このスキャンダル写真は、どこまで出回っているのか、当行のもっと上層部にまで出回っているのか、マスコミにも回っているのか、聞きたいことはいくらでもあるのだが。

「脅して融資を引き出したいとか、ありがちな感じです。後で指定された場所に出向くつもりなんですけど」

広告を非表示にする