ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

金4

 

「誠意を見せて欲しいんですよ」

あっそう、お客様のお求めの、誠意は当店では、ただいま品切れです、と言えないのがもどかしい、こういう場合に、ありがち過ぎるセリフに、戸川は、能面顔で頭を下げないといけない。

そういうのって、慣れてるけど。

単純にこれこれいくらよこせ、もしくは、

一か月5万の業界雑誌を10年契約で買ってくれとか、粘着度の高い要求をしてくる人もいた。

 

しかし戸川は相手のドスの聞いた声色の裏に、何となく、付け入るスキのようなものを見つけた。

こんなことは珍しい。銀行員なんて、どちらかというとツケ入られる方、

でも、いつだって自分は取引先や上司連中にツケいってきたではないか。

目の前で、ダルそうに椅子に座っている男が、素人然としているとか、そういうわけではない。

いかにもコワモテと言う感じ、背だって自分より15センチくらいは高い。

俺はもうこういうの慣れてるから、平常運転でどうぞ、マニュアル通りに金を出してね。

 

 

 

 

箱崎は近寄ってきた男に後ろから肩を抱かれた。
箱崎クン、箱崎クンだよね」
「何だよ。誰だよ。俺の知り合いにホモはいないんだけど」
「1年ほど前に、お前が脅したところあったじゃん、シノハラ興産、とかいう」

「何で知ってるんだよ」

「シノハラ興産は、お前の恐喝を、警察にチクって、物証が揃ったんだ。お前はもう駄目だ」

箱崎は、相手の顔を見ようと思ったが、羽交い絞めにされていて無理だった。

声からすると、ガタイの良い刑事、山野。一度、金銭トラブルを解決してやったことがあった。金使いの荒い刑事は少なくない。

「誤解しないでくれよ。俺はお前に、世話になったことがあるから、教えて上げただけだよ」

「いくら欲しいんだよ」

「1000万」
「コレは、こんなところで済ます話なのか?」
「俺には尾行がついてる。警察の、身内のだよ。ひどい話だよ。監察室に目をつけられたってことだ。大っぴらにヤクザっぽい奴に金を借りるのは無理だ」

「俺は大っぴらにヤクザっぽくないのか」

「お前が大っぴらにヤクザっぽいかどうかだって?それは、お前の今後の行い次第だよ」

「山野よ、お前は警察官だけど、甘く見てやろう。そんなに金が欲しいならこうだよ。ざっくばらんに言うと、
さくら銀行と総会屋関連、お前の持ってるめぼしい資料を、俺の私書箱に送るっていうやり方があるよ。
料金は、応相談」

山野は箱崎を離すと、すぐに雑踏に消えた。

 

 

 

箱崎は、私書箱と貸金庫を回って、書類を漁ると、戸川の家へ直行した。戸川の自宅の住所も、山野の資料に入っていた。

大塚マンション301号室。デカいマンションだ。さすが銀行の幹部一歩手前の女。

ところで、ドアの前に座っている綺麗な顔の男は何なのか。

コレは、あの女狐の彼氏で、何かの御仕置で外きに出したのだろうか。

箱崎は、そいつをシカトすると、呼び鈴を押した。

チェーンを掛けたまま扉が空き、わずかな隙間から戸川の顔が見える。

「何ですか。あの件は、一度持ち帰って上と検討するって、次にお会いする日時も決めたじゃないですか」
「事情が変わったんですよ。何なら送るのをやめてやる、あの資料と写真を。マスコミや、他行に」

「私は今、家宅侵入で警察が呼べますが」

「前にも言ったけど、俺が逮捕されたら、

別の人間からあの写真は、マスコミに発送されることになってるんだ。そういう決まりなんだ。

こういう仕事も、連携が大事ってことだよ。

ところで、俺はけっこう良いネタを持ってるんだよ。

こんなに軽々しく言うのもどうかと思うんだけど、戸川さんが、今にもドアを閉めてしまいそうだから。

ショーエーの役員と通産省の役人の密談テープとか。

お宅のボードメンバーの汚田ってやつの、総会屋とのつながりを示す書類とかも持ってる」

「嘘八百はいらないから、帰ってください」

箱崎は戸川にドアを閉められないように、ドアの隙間に足を突っ込んでいた。図々しい巡回サラリーマンみたいに。

「あんたは、銀行の不正とか、自分の出世に、興味がないのか?

そこのヒモ男にストーカーされる、中途半端な人生で終わるつもりなのか?

役員の椅子に座れば、こんな奴、警備員が追い払ってくれるのに」

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