ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

金5


戸川が扉を開けると、書類を小脇に抱えた箱崎の後を、坂巻までついてきた。頭が痛いが、物は考えようか。

坂巻は均整の取れた体格をしているけど、こんな奴なので、ボディーガードとしてはあまりに頼りにならない。

が、イザとなったら、相打ちさせて両方とも追い出そう。

こいつを追い出したら一晩泊めてやるとか、1万円上げるとか言って。ひどい言い方だ。気分は荒れていた。

戸川は、箱崎の持ち込んだ、スキャンダル写真で、クビが飛ぶ寸前だった。

家に上げても、さすがに殺しはしないだろう。

自分の行いを振り返って、そこまで恨みを持たれているとは思いにくい。

「で、お願いがあって」

戸川はウンザリした。

「またですか」

「こっちは大したことじゃないんです。俺は事情があって追われていて、

意外性のあるところへ、隠れなくてはいけなくなったんです」

戸川はだから何だよ、という顔をした。

「ここにしばらく泊めて下さい。床で寝ますから」

 

 

 

 

香田は戸川に呼び出された。

スキャンダル写真の件で、先方が融資の件について、お話合いをしたいので、同席しろということだった。

行先は喫茶店だった。どうにも軽々しいが、そこが怖い。

恐喝相手の箱崎は、自分が会う人の中で見ると、中小企業かスタートアップの経営者って感じだった。ヤクザ臭は薄い。

コレがインテリヤクザってやつなのか。

「俺は、あんたんところの重役の不正資料を見つけたよ。それで、出来れば、金を取ろうと思ってるんだ。それで、香田クンのご乱交には、興味が無くなってきた」

「そうすると、このスキャンダル写真は取り下げてもらえるんですね」

香田は安堵の表情を見せた。セーフか。融資の見返りに体を要求した、不届き千万のハレンチ男として世間に恥をさらすことは避けられそうだ。

このことは、行内では戸川しか知らない。彼女は直属の上司だから、何か問題人物だと上に進言するかもしれないが、彼女は人事査定そのものにはタッチしない。

戸川が夜中に資料を読んでいる最中にも、図々しく自宅へ上がり込んだ箱崎は、後ろのソファでグースカ寝込み、朝出社するときも眠りこけていた。

ソファに横に黒いボストンバックが置いてあって、邪魔で、おまけに酒臭くて最悪だと思ったが、午前中のうちに勝手にシャワーを使って、着替えたらしかった。

こいつの図々しさは筋金入りだ。

「そいで、この不正資料を活用するには、どうしたもんかと相談したいんだけど、専門家のみなさん。良いかな」

「その重役を恐喝してお金を取るつもりなんですか。それとも、メディアに流すとか」

戸川は、銀行のスキャンダルは困る。だから、メディアに流されるのは困った。

一方、派閥争いには特に参加していないから、不正をしている重役がどうなろうが、興味がないが、その金が背任で銀行から拠出されるのはまた困る。

そうすると、あらかじめ、警察に通報しておけばいいのだろうか。それはその重役を、罠にはめることにならないか。

香田は一座の沈黙に耐えかね、箱崎の持っていた資料を手にとって眺めた。

重役連中の不正、ある意味、俺の仲間だ。身分は違うが、どいつもこいつも薄氷の上を歩いている。

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