すみま千円(漱石のほう)

レポート置き場かな?宜しくお願いします。

金7

 

「私は本来、あんたみたいな人たちに会っている暇はないんだよ。忙しいのにゴタゴタ、何をやっているのかね」

事件屋もどき、それも小物だ。邪険にしなければ、無限に沸いてくる人種だった。

それを、当行の銀行員が連れてきた。古宿の支店長とその部下。

「彼が、お耳に入れたい情報を持ってきたからです。当行の不正に関するデータです」

「それは分かったよ。うちは嘘の見積もりをつくって、政治絡みのバックがあるショーエーに貸し込んでる。

ショーエーだけじゃないかもしれない、

不良債権貸し剥がしが騒がれる中で、未だに一部の重役連中が、特定の融資先に、口利きをして通してるかもしれない、ってことだね」

「美濃部さんは、清流派という噂でしたので、僭越ながら、美濃部さんのところにお伺いしました。
美濃部さんが駄目だと、この話は、おしまいです」

「私は銀行のオーナーじゃない。私は清流派というか、黙って仕事に打ち込んできただけだ。そういうもめごとは、手に余るよ」

美濃部は一応、資料を受け取った。

いくつか保険でコピーした資料のうちの1つだ。

 

 

 

 

 

坂巻は一度、実家へ戻ると、リクスーを引っ張り出し、帰りの足で就職面接を受けていた。

銀行の広報出身、同僚や取引先と、コミュニケーションを取るのが得意です。とか何とか、彼のトークは立石に水だった。もちろん相手の話も聞きつつ、周到に自己アピール。

坂巻は新卒の頃から、面接はいくつも受かった猛者だが、前の職場では勤務態度で難癖を付けられた。

銀行の雰囲気は彼には硬すぎたが、かといって広告とかイベントとか、チャラい業界は労働時間とかキツいし。

「失礼します、お宅に耳よりの情報を持ってきました」

唐突に、背後のドアが開いた。

「誰ですか、あんた」

面接官が戸惑った顔をした。

「彼は犯罪者スレスレの社会不適応者だ。
こんな人を雇うのは止めたほうが良いです」
「坂巻さん、何ですか、この人」
「私が聞きたいですよ。誰ですか、あんた」

「坂巻は、サクラ銀行の古宿支店、支店長の女のところに、居候している、ヒモだ。

彼はこれから、寄生主をお宅に変えようとしているに過ぎない。

こいつは本当に働かない」

 

 

 

「帰ったら部屋が荒れてた?帰ったって、どこから?」
「面接だよ。そこにリクスーが置いてあるだろ」
「嘘つけ。昼間から飲みに行って、鍵閉め忘れたんだろ」
「鍵は壊されてたじゃん、変なイチャモンつけるなよ」

年の頃も同じで、背格好は似た感じの坂巻と香田は、折り合いが悪かった。坂巻は無職のチャラ男で、香田は真面目な勤め人、クビを切られかけている。

戸川はだんだん修羅場に慣れていく自分にビビリながらも、黙って部屋を片付けていた。

「でも、お前みたいなヒモが企業面接なんか行くかよ。風呂場かどこかに隠れて、震えてたんだろ」

「香田みたいなケツナメ野郎に言われたくないよ。俺は今、たまたま失業してて、勤労意欲があって、能力があって、だから面接に行ったんだよ。
今現在、たまたま上手く言ってるやつが調子にのるなよ」

「何がケツナメ野郎だ。
まあ、俺はこのオッサンのせいで、お前みたいになろうとしているけど」
香田が箱崎を小突いた。
箱崎はバツの悪そうな顔をしていた。
箱崎は、そもそもの一連のトラブルの発端で、香田をハメてスキャンダル写真を撒こうとした張本人。
恐らく戸川の部屋を荒らした狼藉者が、探していたと思われる資料は、坂巻が持ち歩いていたので、無事だったし、コピーが貸金庫に置いてある。

「あの資料は、サッサとマスコミに送ったりして、公開してもらって、手放してしまった方が良かったんじゃないですか」
「そうしたら、銀行、潰れませんか」
「さあ、大きい銀行だから、これしきのことで、潰れるってことは、無いと思いますが」

「凄惨な内部告発者探しが始まるよ。こうやって人の部屋を荒らせる奴らが、黙っているとは思えない」

箱崎は昔の、これまでの例を思い出した。
自分がまいた資料のせいで、銀行の重役連中がゴタゴタしたこととか、総会屋の大物が出てきたとか、マスコミ絡み、官庁のお出まし。

「お前がスキャンダル写真とか、持ち込むから悪いんじゃないか。
箱崎が、銀行から金とろうとか、くだらないこと考えなければ、こうならなかった」

「それだって潰れるかもしれないだろ。不正が積もり積もって、山一みたいに」

広告を非表示にする