すみま千円(漱石のほう)

レポート置き場かな?宜しくお願いします。

イチキュウハチヨン1

 

街中に聳え立つ、巨大ビジョン。産業技術の粋。
「かつて、自分探しという言葉がありました」

赤子を抱いたモンペの女性が滔々と視聴者に話しかけている。

照明を受ける、彼女の顔立ちは、綺麗だった。

小汚いモンペを着ていても引きたつ容姿、北朝鮮のキジョップみたいに、

スラムにたたずむエギソチックな美しい少女みたいに。

1万人のオーディションで選ばれたという噂があった。

財政界の子弟が混じり、裏金が飛び交ったとか言う噂もあった。

このあと、どういうテロップが大文字で出るかは、誰でも知っている。

「しない、させない、持ちこませない、自分探し」

 

 

「まだ、子供いないの」

女子高生が婦人団体に囲まれていた。

「ちょっと遅すぎるんじゃあ、ないの」
「悪い友達同士でつるむからよ」

その光景は、ハイビジョンの近くで明るいライトを浴びながらでも、薄暗い裏通りでも、よく見られた。
「20年後にはその肌、どうなると思ってるの」

その肌、どうなると思ってるの、か。少女たちは一瞬、目を上げた。ソレを目の前の婦人団体は如実に表していた。

また3人は俯いた。

目くばせなどすれば、よけいにイビられて、この友情は終了だ。

友人同士の人徳が試される瞬間。

 

よく密告に励む人が出た。

縦社会で、あからさまな追随者が出てくるのと同じで、抜け駆け上等、か。

きっとデカいケツは舐めるが勝ちで、一度舐めてしまえば、もうそのケツが汚いとか、気にする必要はなくなってくるんだろう。

目の前にチラつかされる、ボーラーライン。

その一線を超えるか、超えないかで、ビジョンは一遍する、人生は180度、景色を変えるだろう。

 

街頭ハイビジョンの明るすぎる照明が、女子高生たちの顔に、オバサンたちの顔に極端な陰影を生んでいた。互いに、互いが、悪魔みたいに見えた。暗闇に浮かび上がる、あどけない少女の顔、皺が刻み込まれ年期の入った女の顔。

 

「円周率を10ケタまで書きなさい」「鎌倉幕府の年号」
「次の文を読んで、作者の言いたいことに一番近いものを選べ」

子供たちは真剣だった。

このテストで高得点を取り続ければ、いつか支配者階級に上がれる可能性が出てくる。


「サッチー、受験、どうすんの」
「うーん、やめるかも。面倒臭くなった」
「変な男の子供を産まされて、バブー、とか言って、そういう人生しか待ってないのに?」
「私は、脳みそ、無くてもよかったよ。心は、無いほうがいい」
「私たち、大きくなったら、そういう政治団体作らない?」
「聞かれたら、明日、もう生きてないかもしれないよ」