すみま千円(漱石のほう)

レポート置き場かな?宜しくお願いします。

イチキュウハチヨン2

 

「ポポポポポポケポケケ」
「ポケポケー」

痴呆の防止に良いとして、ポケポケモンというゲームとアニメシリーズが流行していた。

医学の進歩で、実現可能な寿命は150歳を超えた。

ここの老人たちは、ほとんど表情がない。体のどこかに、何らかの管がついていることが多い。

彼らが死ぬことは許されない。

老人の代理投票は、日本神党最大の票田だった。

 

 

 

アヤは自宅に立てこもり、インターネッツに一通り犯行予告をした後、メディアと警察を呼んだ。

旦那の出張中を狙い、舅と姑は既に絞殺済みだ。そう、これだけ殺せばアッサリ死刑になれそう。

「あなたたちがこの声明を報道しなければ、この赤ん坊を殺します。射殺してもいいですよ」

「何やってるんだ。あんたは母親じゃないか」

「もう母親になりたくないからテロやってるんです。

私は生活に困って売り飛ばされただけです。

社会的レイプでできた子供です。この赤ん坊には、憎悪しか湧きません」

奥さん連中がワラワラ湧いていた。

彼女たちはコレを、脱落兵を見るのと同じ目で見てるんだろう。

 

昔の兵隊が、戦争に行きたくないと泣き叫んで、電柱にしがみついたり、兵舎を脱走しようとして、射殺されたりするじゃん。

でも、それって本能だし、仕方ないよ。

戦闘行為が人の本能なら、戦闘行為をしたくないのも本能だった。

誰かの子供が欲しいのが本能なら、誰かの子供が欲しくないのも本能だった。

やりたくないものはやりたくないよ。

アヤは兵役逃れで醤油瓶を一気飲みした兵士の気持ちが分かった。でも自分たちを窮地に追い込んだ、得体のしれない巨大艦隊に、盲目的に特攻した兵士の気持ちも分かった。

 

ま、気がするだけかもしれないけど。アヤは深呼吸をして、自分を囲む警察官やヤジウマを見た。つまり、この2階のアパートからは、睥睨する形になった。それから、目線を上げて、またアホみたいに澄み切った青い空を見た。雲1つない大気圏は、場違いなくらいに澄んでいた。

きっとここにいる、誰の気持ちも、反映していない、優しくて冷たい空。 

 

こういうときは、当たり前だけど、常識のタガが外れた、想像力も時空のかなたに飛んだ。でも、とうの昔から彼女の常識のタガは飛んでいた。

望まない妊娠を強いられたときから。