すみま千円(漱石のほう)

レポート置き場かな?宜しくお願いします。

イチキュウハチヨン4

頼りないように見えて、ふてぶてしい人は多い。

ソレが大人だろうと、子供だろうと。だから、泣いていた子供は、すぐ笑う。
女児は、アヤの部屋で、黙って買ってきたコンビニの弁当を食べると、コタツでテレビを見ていた。

きっとお腹がいっぱいになって、面白いテレビを見たから。

「あーあ、誘拐だな」

「誘拐犯にされくないなら、サッチーは帰る?ここにいると、通報されたときに、共謀したとか言われるよ」

「声かけようよっていったの私だし」

サッチーは女児の髪の毛を触った。

彼女は「キララ」と名乗った。本名なのか、偽名なのかは分からない。

「キララは家、帰る気ないの」

伸びた髪、多分、あまり手入れをされていない髪。

ソレもあとでとかしてあげないといけない、風呂場で洗ってあげないといけない。

「無い」

アヤが肩をすくめた。
「無いのかよ。お父さんかお母さん、怖いの?」
「怖いよ」
児童相談所案件なのか」
「とりあえず通報しておこうよ。保護っていう名目が立つように」
キララは言ってることの意味が分からないみたいだった。

テレビに目を戻した。

「だけど通報しても、だいたい家に返されちゃうんでしょ」
「なら、お前の子供にするのかよ」
「それも無理だね。お金がないよ。幼稚園への送り迎えもできない。

教育を受けさせるお金もないよ。気が滅入る」

 

 

アヤが執拗に泣いているので、真帆はもらい泣きしそうになってイラついた。

「泣くなよ。

この子、図々しく寝てるじゃん。

世の中の人間は、お前ほど繊細じゃないのかもしれないよ。

この子は、親にボコられながら、ヤンキーになって生きていくかもしれない」

「親なんか、どうでもいいよ。その女に出産を強いた奴を殺したいんだよ。

クソな女が子供を生まなければ生きていけない、クソな世の中の仕組みをどうにかしたい」

キララはすぐ泣きやむ、アヤはなかなか泣き止まない。尽きせぬ井戸みたいに、次々によみがえってくる、ロクでもない記憶。キララはまだ5年くらいしか生きていない。

 

 

 

「結婚おめでとう、っていうの?」

「目出度くは無い。ただの侵入計画だから。テロを仕掛ける為の」

「はあ、災難だね。ウケる」

誰も、賛成とも反対とも言わなかった。吹きだしたあと、呆れていた。

「でも私の名前は出さないでね」とサッチーはいった。

アヤはサッチーにケリを入れながら、笑った。

サッチーはアヤより綺麗だった。グットルッキングだった。

もっといい人生が送れるだろう。

「相手の家が、ロクでなしなことはチェック済みだからいいよ。

初対面で、子供産めるの、みたいな図々しい物言いとか、感じの悪さとか。絞殺してもお釣りがきそう」

顔が悪ければ親にも嫌われるし、顔が悪い上に親に何も教わらないから、学校でも上手くはいかない。

「マジでその計画発動するの?

今から事件へのコメント考えておくべき?何か言って欲しい事と、言って欲しくないことってある?

友達がテロで死ぬって悲しくない?」

「でも私が特攻やって、世間に天誅を加えれば、他の2人はセクハラは受けなくて済むじゃん。他の子供が欲しくない女が、セクハラ受けなくて済むじゃん」

サッチーはバカ笑した。祝義も何もない。そんなクソ結婚式なんか、出ないよ。

「アヤの来賓は、親くらいだな」

 


「子供、要らないんですけど」

「あんたは何もしないで生きてるからだよ」

「他の何もしないで、生きてる人はどうなんですか?」

「他の?」

「老人と失業者です」

 

あれから5年後。

真帆たちはかれこれ、5時間以上グランドを走り続けていた。

ココは失業者、日本神党(その実態は、中国共産党の日本支部といったところ)に、反抗的な人間などが集められ、常に定員をオーバーしていた。

ハローワークで指定された仕事を断れば兵役だ。

反抗した者、秩序を乱した者などは無条件にリンチされた。上官が指示しなくても、それは勝手に起こった。

こううときに、正論を吐いたり、くだらない疑問を呈する人間は邪魔なだけだ。

真帆は元々あまり体力がないので過労で発熱し、そのまま風邪を悪化させて死んだ。