ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

侍3


この辺は100個以上のテントが張ってある、スラムと化した地区だった。

もちろん、街の浄化とか、施設の建設とか、何か理由があればいつでもテント群は撤去される。

そのリスクを勘案しても、逃げて他の場所を見つけるのに、大した荷物もないし、

街中なので何処へ行くにも通勤がもラクで、とりあえず、そういう場所とそういう人々だった。


タカが死体を埋めたショックから立ち直りつつあったその日、

ノリは別種のショックを抱えてテントに帰ってきた。

「俺はマズいことをしてしまったかもしれない」
「はあ?」
「建設会社を襲ったんだよ」
「何でだよ」
「金が出なかったから。ミャオとか他の奴らと一緒に」

「ふざけんな。俺まで巻き込まれて強制送還とか、最悪逮捕とかされたらどうすんだ」

「逃げたほうが良いかな?お前は逃げる?」
「何で無関係の俺が逃げないといけないんだよ。そんなにヤバいのか?」
「大丈夫だと思うんだけど。こんなこと、ここでは日常茶飯事だから、いちいち捜査とかしないよ」
「でもその、夜逃げした施工主が有力者に近いとか、いろんなケースがありえるだろ。捜査しないっていうのは甘いよ。
っていうか、やってくれたな。ふざけんな。俺は平和を愛する市民だったのに」
「俺たち、この辺で、顔とか覚えられてるのか?俺がいない間、誰か来た?」
「知らない。俺は昼間いなかったし。俺も就職活動中だ」

ノリは、申し訳程度に、帰り道に買ってきた、屋台のチャーハンを差しだした。

タカは、腹が減っていたので、黙ってそれを食べた。死体を埋めた日から2日くらい食欲不振が続いたから、空腹がひどい。

チャーハンを空にすると、ノリにもう1つ、何か食べるものを買いにいかせた。

 

 

 

ノリは昼食の後、午後中テントを空けて、帰ってこなかった。

タカが夕飯を調達しに外へ出ると、

多分中国人の子供が、ニヤニヤしながらタカを見て後をついてきた。

見かけない子供だ。

まあ、このスラムの住人は多過ぎて把握できないのだが。

年の頃、5歳?6歳?7歳?彼には子供の年は良くわからなかった。

もしかして昨日、俺が死体を埋めたことを知っているのか。

それともノリの打ちこわしがバレて、逮捕状が出たとでも言いに来たのか。

彼は神経過敏になって、子供にすら何かしらの凶兆を嗅ぎ取った。

「オイ、坊ちゃん、俺は日本鬼子だぞ。取って食うぞ」
「鬼だって。本当は大したことないくせに」
「何か用か」
「僕、お腹すいたんだけど」
「俺はお金もってないよ。だいたい今は、日本人より中国人のほうが金持ちだし」
「僕は今日、ちょっと小銭もっているんだよね」

子供はタカのどこが気に入ったのかわからないが、

タカの先を歩いたり後を付いたりしながら、その日の昼間に靴磨きでいくら稼いだかなどを講釈し始めた。

通りがかりの人の身なりを見て、旦那、社長、など、適当に使い分けている、

女の人なら、結婚しているか、していないかもわからないし、お姉さん、が無難、とか何とか。

タカをチラチラ見上げながら、彼なりの商売の工夫があることを話した。

タカは職の無いときは浮浪者一歩手前だが、靴磨きはしたことが無かった。

「そんなに儲かるなら、俺も靴磨きしようかな」
「オッサンじゃ儲からないよ」
「そうだね」
タカはポケットに手を入れて、遠くを見た。ポケットには一食分の小銭が少し。

空は薄曇りで、多分、排気ガスや工場からの煙、が、薄く漂っている。大分、昔より良くなったらしいが、この辺で澄んだ青空は出ない。

「オジサン、懐が寒そうだね?お腹空いてるの?僕に昼飯を奢ってほしい?」

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