ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

侍7


「ハシダさん」

リンが、怪訝な顔をしてタカの部屋を訪ねた。

不穏だ。気を付けていたつもりだが、何か粗相があったのか。

タカは胸騒ぎがし、呼吸が浅くなった。

「ハシダさんの知り合いと言う人が、会いに来ています。

ハンさんと言うんですが、会いますか」

「僕はハンさんと言う人は知らないんですけど」

胸騒ぎは止まらない。何故だろう、死体を埋めたりしたからか。

「彼は、タグチさんの知り合いだと言っている。

ハシダさんとタグチさんは日本人同士で仲が良かった。だから彼のことを尋ねに、ハシダさんに会いに来たって言っているの」

タカは、ここへ泊まり込みで暮らすようになってから、ノリとは会っていない。

給料未払いの会社に打ちこわしに行って、ヤバイことになったとかいっていたが、彼は未だにあのテント村にいるのだろうか。

タカが居間へ降りていくと、応接間のソファーにハンと名乗る男が座っていた。

細身の男だが、いかにも人夫って感じもした。この屋敷にいると、まるで内装業者かテレビの修理屋だ。服装が雑だからか。

タカは自分のことを棚に上げて思った。

だけど、ここで着用している、タカの服は、ここの主人のツェーのお下がりだから、なかなかのものだ。


</pre><pre class="l">【ToBeContenued】</pre><pre>

「ノリがあなたたちの金を奪って逃げた?」

居間に集まっている人全員の目線がハンに集まった。

「分かりません。あの現場には5人いたし、誰が奪って逃げたかは分かりません。

だからハシダさんに、ノリさんについて、知ってることを教えてもらいたいんです。

ノリさんは、テント村から消えてます」

アレンがタカの膝に取りついて、目を輝かせている。勉強は嫌いだが、好奇心は旺盛だ。

メイシーはお菓子に執心で、テーブルの上の2つ目のマドレーヌに手を伸ばす。

タカは、雇用主の一家に、こんな話を聞かせるのは心外だが、

人払いしたら尚更怪しい。自分は何も悪いことはしていない。

勤め先の建築会社を未払いで襲ったのはノリだ、俺じゃない。それを分かってもらわなくては。

ハンとタカは、テント村にノリの物証を探しに出かけた。

メイシーが、テント村が見たいとついてきた。貧富の格差は中国の現実だ。

こういう高級住宅街に住む子供には見せておいても良いだろうと、ツェーは言った。それで結局、アレンとメイシーとツェーもついてくることになった。

まるで物見遊山って感じ。

タカとハンが側にいるので、彼らは安心していた。

見るからに身なりの良い、彼らだけでスラムへ行ったら、どんな目にあうか分からないし、どんな目にあっても自己責任だ。

 

 

 

 

ウルスラが紹介された、ウイグル人の地下のネットワークなるものは、ショボかった。

発端は、当局に住んでいた土地を接収されたとか、役所が漢人で占められているとか、ありがちだ。

それで、正義に駆られて、誰かに嗾けられて、抗議運動などに繰り出し、そして当局に弾圧された。

台帳に叛逆の記録を付けられ、まともな職につけなくなった。

そんな迂闊な奴らの吹き溜まりだ。住んでいるところはスラムだから、確かに目立たない。

正規の仕事に就けないので、

胡散臭い仕事を探し出してきて、それのできないカタギの人の為に、片づけてやったり、

それで、することが無い日は、ゴロゴロ寝ていた。

暑苦しい髭面のオッサンの群れ、水ぼらしいショールを被り、街頭で募金を集める婦人もいて、気の毒だった。何とかしたい。

イスラム教徒とは言っても、5回のお祈りを欠かさないのは、ウルスラと数人くらいだ。

何故、俺は祈るのだろう。これは彼の精神安定剤だった。

子供のころから祈り続けてきた。

今より、少しでも状況が良くなるように。

もちろん、状況は良くならない。だから祈りは効かないが、

これまでの祈りがたまりにたまっているから、いつかドカンと効くような気もする。

アラーは俺を見捨てない、多分。

 

 


「ロン毛は、今、何してるんだ」

ミャオは彼の金を取ったロン毛を探していると言った。

ノリとミャオは、ユースホステルに宿を取った。

外国人に、警察はあまり近寄らない。たまにガサ入れがあって、ガンジャなどを吸っていた、運の悪いバックパッカーが勾引されていく。

コカインや覚せい剤でない限り、国外追放程度で済むのだけど。

「どこにいるかも、分からないよ。人肉検索やったけど、同姓同名のやつとかもいるし。

写真は持ってなかったから、似た奴探して張っておいたけど」

ミャオは話の合間に、たまにスマホを取り出して株取引をした。画面にグラフや数字が出ている。

ノリは株取引というと、机の上に5つくらいモニターを並べてやるやつしか知らないので、それに興味を持った。

「それってどうやんの。俺でも儲かるか」

「理論を知らないと儲からないよ。ただFXだから、中国とか関係ない。お前、いくらくらい持ってる」

「ほとんど持ってないよ。一か月分くらいのメシ代ってところだよ」

「なら、この調査費用は、俺の貸しだな」

「お前は、怖い金貸しなの?」

「俺は株はやるけど、金貸しはやらない。

でもロン毛にはムカついてる。

ロン毛は、胡散臭い事ばかり言ってた。それで人から金をだまし取ったり。俺はバカじゃないから、それが良く分かったよ。

彼に騙された女の子も沢山いた」

「良く知ってるね」

「ロン毛に逃げられた女の子に、連絡先とかよく聞かれたよ。俺は知らないのに。

あとは、つるんでた俺のところに文句を言ってきた子もいるよ」

「お前ら、仲良かったよね」

「俺らは、浮ついたことに興味があったからだよ。あの中では、どっちかっていうと、相対的には。ウルスラは真面目だったし、お前もそう」

「俺は、女の子が、寄りついてくれないだけだって」

「ノリは、誘っても断ったじゃん」

「だって日本人はカモられるっていう噂が、すごいあるし」

「俺たちは全員カモられてるよ。誰かが誰かにカモられてる。どうしてもっていうなら、カモる側に回るしかない」

「お前は誰かをカモったのか」

「俺は株をやって、まっとうに働いてるだけ」

「フーン」

やっぱりこいつは胡散臭い。ノリは思ったが、他に頼る人がいないのも事実だ。

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