ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

侍9

 

ウルスラがインターフォンで用件を言ってしばらくすると、2人の男が出てきた。

高そうな服を着た、身ぎれいな男と、ボロボロになった男。

「こいつ、外に捨ててきて。どこでもいいから、1時間くらい走らせて、山の方に捨ててきて。人目のつかないところ。表に黒い車があるから。車のキーはコレ。車は乗り捨てて良いから」

ウルスラは、血まみれの男と、札を5枚ほど押し付けられた。

ウルスラは、血を見るのが嫌いだったから、気が滅入った。

「これ、どこに出しときますか」

部下らしい男が、封筒を持ってドアから出てきた。ロン毛。マジかい。当時の作業着ではなく、高そうなスーツを着ていた。

ウルスラは彼を見た。ロン毛も、こっちを見た。

「よう」

「何なの、お前ら、知り合いなの」

やっぱり高そうな服を着た依頼主の男は、興味深そうに2人を眺めた。

バイトで一緒になったことがあるんです。俺はセルバンデスさんに拾ってもらう前は、マンションの壁塗ったりしてたんですよ。ハハハ。そこはつぶれてしまったんですけど。俺ら、運が悪くて」

セルバンデス。ウルスラの目の前の男は、典型的なモンゴル顔だった。血まみれの男が何か呻いていた。

ビジネスや商売で、変な名前を付けるのは、流行っていた。子供に外国人の名前をつけるのも、流行っていた。

ウルスラ、あのあと、どうした?会社から金貰えた?」

「え?ロン毛は?」

「俺はもう諦めたよ。小さい金にこだってもしょうがないから。金を取ったやつを探すより、今働いたほうが、割が良いし」

 

 

 

ツェーの一家に週払いで貰っていた金で料金を払って、スマホを復活させると、タカの通話は、奇跡的にノリに通じた。

タカは、ノリのユースホステルの場所を聞いて、合流した。

確かにこれはこれで、分かりにくい界隈だった。バックパッカーが多く、租界と化している。

あまり頻繁にガサなどを入れると、客が来なくなって閑古鳥が鳴く。

「これが噂の先生ですね。俺は株とかやってる胡散臭い男です。

ミャオっていいます。今度、算数とか教えて下さい。先生」

「お前、俺のことバカにしてるだろ」

「違うよ。俺はマトモじゃないから先生とかできないんだ。あんまり人に信頼されないし。よろしく、先生」

ミャオは自分が信頼されないという自覚があるのか。ノリは2人がすぐに仲良くなったので、少し嫉妬した。

タカはベットサイドに腰を下ろすと、いきなり切り出した。

「俺らは追われてるんだ」

「え?何で?確かに、俺らは追われてるんだけど。何でお前が?身元バレたの?警察に?日本人だから?」

「お前らが取って逃げたもの中に、ヤバい書類があったんだって。

あの会社が、地元の政府と癒着しているっていう、マスコミなんかに流れたらヤバイ資料が」

「それって、コレのこと?」

ノリは汚れたリュックを引き寄せると、中から紙の束を取り出した。

ノリは確かに、あのとき、この紙の束を持ち運んで逃げた。記念に持っていたのだ。どうせ中身は中国語だから分からない。

すっかり忘れたままリュックに突っ込んであったので、バラけて角が折れていたりした。

ミャオがそれを受け取って、中身を読んだ。

「コレは、ヤバ目かもしれないね。俺も詳しいことは分からないけど。

この紙は、業者の入札契約みたいなモンだよ。

地元政府との癒着を示すと言われれば、そんな感じもするし。役人の署名とかも入ってるし」

「俺は、何か、未払いの証拠でもないかと思って。取っておいたんだけど」

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