ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

侍13


「これで俺たちは、目出度く再会ってわけだな」

留置所には、10人ほどの人が詰め込まれた。5人は同じ牢屋へ放り込まれた。

隣の留置所にはセルバンデスの会社の社員とか、ツェーと、ツェーがチクった幹部とか、いろんな奴が入っているようだ。

ミャオがロン毛を見た。

「ロン毛、俺はずっとお前を探してた。俺の金を取ったのは、お前だろう」

「金を取ったのは、俺だよ」

ハンは壁際に寄りかかって座っていた。全員の目が、いきなり自白したハンに集まった。

確かに、ハンは新品のシャレたスーツを着ている。昔は汚いTシャツとパンツだったはずだ。

「俺はけっこう借金があったし、あとは、その金の一部を家族に上げて、弟がアメリカへ行ったんだ」

「ミャオは、いくら貯めてたの」

「待てよ、俺はハンに金の場所とか教えてない。あんな、はした金、またも儲けようと思えば、儲けられるから、もういいけど。

もちろん、返してくれるなら返してもらうけど。お前は、どんだけ絞っても、もう使っちまいました、っていう顔してるし。

お前を、牢屋に入れても、タコ部屋に入れても、金は戻ってこない。

でも、何でハンが俺の金を持ってるんだ?」

「俺は警察の知り合いがいるんだよ。俺は、いろんなことを知ってる。

俺たちのメンは結構早いうちから割れてた。

とくに、ツェーって奴がチクったしね。そこの、アレンの親父だよ。

ミャオたちがメディアに汚職の資料を送りつけたから、尚更騒ぎになった」

「警察の知り合いがいるのに、建築現場で働くか?」

「警察の知り合いがいるくらいじゃ、就職できねーよ。警察はボランティア組織じゃない。

俺は昔から、あんまりデキが良くなかった。だから新築マンションの壁塗りをやってた。そんだけ」

「じゃあ、告白大会をしよう。コレはここだけの話にしよう。取り調べでは、言わないって約束で」

ウルスラが神妙な顔つきをして言った。普段は無口なウルスラに、興味深そうな視線が集まった。

「俺がロン毛に渡したメモリは、偽物なんだ。

本物の方は、地元の警察に捜査資料として渡すことで、俺たちウイグルのテント村の住人は、公営住宅に移ることが出来た」

「それは別にいいけど、あんなの、俺たちは要らないし。

でも、セルバンデスがパソコンにブッ差した、あのメモリは、中国の株式市場を麻痺させるウイルスソフトなんだろ。警察が言うには。

それはどこで手に入れたんだよ」

ウイグルの友達が持ってたんだよ。何か、ヤバイヤツだったけどな。たまたまアレが、同じ見た目のメモリスィックだった。

ミャオみたいに、汚い格好をして、プログラミングとか株とかやってるやつだよ。俺は中身が何なのか、知らなかった。それは誓うよ」

「誓うとか何とか、あんなヤベーもの渡しやがって、結局アレが俺たちが捕まった原因じゃねーか。なんでわざわざ俺に渡してきたんだよ」

「俺があの変な絵を持って逃げたことは、みんな覚えてると思ったから。アリバイだよ。

俺の地元の警察は、広州の警察を、出し抜きたかった。偉い人たちの世界では、他人の汚職情報を掴んでおけば、いろいろ有利だ。

だからコッソリ絵の裏にあったメモリを押収して調べたかったんだよ」

 

 

 

 


彼らが拘留されて1週間ほどたったある日、仏頂面の警官がやってきて鍵を開け、

2冊の雑誌を放り投げた。ヌースウィークとサンだ。洋雑誌の中国版だ。

「建築会社の未払いに抗議した労働者たち、広州市当局の不正を暴くお手柄」

「中国の株式市場に蔓延るインサイダー取引の不正を警告する現代のロビンフット」


帰国後、タカは坊主にし、ノリはロン毛にして、メディアに載った写真からは想像ができないくらいにイメージチェンジを図った。

帰国直後にも、空港などで映像を取られた。

「よう、ロビンフット」とか言われるのが面倒臭かったからだ。

違う。ただの出稼ぎだ。やめとけ。

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