ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

ロックバンド・インパール2

誰もが思っていた。奴隷の数は揃えないといけないが、自分が奴隷になるのはゴメンだと、世界中の上から下まで、誰から誰もが思っていた。

「真木くん、君のところの女の子は、大人しいね」

「じゃあ一番キツイことをいった奴は査定の対象だ」

真木の声が響いたあと、沈黙が部屋を支配した。正味、3分くらいか。かなり長い。

「うーん、例えば、真木さんは自分が出世できない人生を肯定できますか」

「能力差だから仕方がないだろう」

「だから産まないんじゃないですか。能力の無い人は不幸だから。私は子供を不幸にしたくないし」

「尾上さんが無能?冗談言わないでください」

「私はヒラですし。それにこれは、物の例えです。私たちより収入の無い人は、さらにそう思っているはずです」

「能力の無い人が必ずしも不幸か?身分相応に暮らせばいいじゃないか」

真木は諸条件に恵まれた霞が関のエリート男性。

身分相応?今の日本は平均人が身分相応に暮らせる世の中ではないが、だからここに職員が配置されているのだが、そう指摘すると、

ここに座っているメンバーが仕事を怠っているという非難になりかねないし、とりあえずそれは脇に置く。

尾上は矛先を変えた。

「だったら真木さんが、そのふかふかした椅子から降りて、早く引退してくださいよ。

高給を取ったり、経済の前線にいないことが、不幸じゃないんでしょう。不幸じゃないことを、体を張って見せて下さいよ」

「屁理屈の多い奴は出世できないよ」

「ならどういう人が出世するんですか?

理屈は少ないけど、理不尽なノルマをデッチあげて人々に押し付ける人ですか?」


女は種の選別を担う。

ここの女性職員のほとんどが、無意識にそう思っている。

ただ世の中には、迂闊な人が存在するだけ。

彼女たちの言うところのカスな男を蔑視することに、何の良心の呵責も感じていなかった。

というか蔑視する以前に、視界に入れない。

ここに入れば、そういう男は視界に入ってこなかった。

自分の軽蔑する者が視界に入ってこない人生、それは、誰しも望む人生だ。

善良な人なら。

他人を見下すことを生きる糧にする、邪悪な趣味の持ち主でない限り。

「女性に能力が無いと言われると、俺たちはつらいね。

尾上は女性だから出世しづらい面もあるだろう。

次の世代には、男女格差は埋まっているかもしれない」

「広まっているかも知れませんね」

「そう、ますます広まっているかもしれない」

元々あまり評価の良くなかった日本の男女格差は、既に世界ランキングで100位以下に転落していた。

天下の公道を我が物顔に闊歩する女連中から就業機会を取り上げて、ひっつかまえて家に放り込んで、畜産業の要領でやれば、数だけは揃うんじゃないの、

オッサンを並べると、そういう暴言が飛び出して歯止めが効かなくなるから

(それに、そんなのが会議録に残って巷に流れ出したら事だし)、

局長は、真木に女性陣を呼ばせたのである。

しかし、日頃、そういうオッサンと肩を並べて働いている女性なので、

朱に交われば赤くなり、一旦口火を切ると破壊力はハンパなかった。真木は局長の顔を見るのが怖かった。

「そんなに少子化対策を進めたいなら、45さんが率先して、子供を10人くらい作ってください。真木さんなら、苦労しないと思いますし。

世の中、少子化が問題だと考える人が、子供を作ればいいだけの話です。

少子化が問題ではないと考える人たちに、それを強要するのはおかしいです」

真木はしがない自分に矛先が向かったことに怯えた。

子供が10人、ハーレムということか。コンクリートジャングルに君臨するライオンキング。

こういうときは、局長を出しておけば、鼻の下を伸ばすんじゃないか?局長、私は、あなたの子供が欲しいんです。そんなことはないか。

でも女性がオッサンに使って効果的とされるオベッカのたぐいを、真木はよくしらない。

自分が女子職員からそういうオベッカを使われる対象になっているとしても、鈍いから気がつかない。

厚生労働省は、国民の福祉の増進を図るところです。

人々の人権を無視して、少子化対策を進めるモンスター機関じゃありません」

「福祉を増進する為に、少子化対策をするんじゃないか」

「それが私は疑問なんですけど。

インドよりシンガポールの方が生活水準が高いし、アフリカより北欧の方が良い生活をしています」

「オイオイ、そんなことをマスコミに向けて君たちは言うつもりなのか」

「待ってくださいよ。コレは難航している日本の少子化対策について、忌憚なく私見を述べて下さいっていう、ブレインストーミングじゃないですか」

「だったら今のは、全部キミの頭の中で考えたことなのか。俺は背後にメデューサみたいのが見えたんだど」

 

広告を非表示にする