読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

ロックバンド・インパール3


呼び出された職員がゾロゾロを会議室を後にした。

前を歩く局長のハゲ頭を見ながら、尾上と藤井は、並んで歩いていた。

藤井の、さっきメデューサ化してましたよ、という目線を受け止め、尾上は首を傾けた。

何処へ行っても通用しそうな所作だった。

仕事を辞めても飢えて死にそうなタイプには見えない。

2人とも、忙しくて切る暇がない髪の毛を後ろでまとめているが、それが様になっている。

しかし、何、小首とか傾げてんねん、と、尾上も藤井も思った。

2人とも生活保障上、男をアテにするつもりないから、彼らに媚びを売る必要はない。

あなたはいつ結婚するの、子供はまだかしら、云々。故郷の田舎の淀んだ空気が彼女を憂鬱にし、その呪縛から逃れて、尾上はここへ来た。

でもそんなのは、例えば給湯室でタバコをふかしながら吐くグチでもないし、藤井ら、同僚は知らない。

そういう就業動機は、どちらかというとダサい。

ココに給湯室なんてないし、タバコも禁止だけど。

それにここには、寿退職しない女子職員をバッシングするような風潮は無い。

藤井は数年前に産休を取って復職しているし、

役職は、同い年の尾上とそんなに変わらない。ここは民間と違い、育児支援の為のバックアップは厚かった。


「何の過不足もなくキャリアとプライベートが両立している人に、少子化の原因は分からないと思うんですよ」

「そうですか」

今度は藤井が小首をかしげた。相手を先にホメて次に落とすのが、尾上の会議での必殺技だったから、藤井は身構えた。

「って真木さんに言われました」

「真木さん、尾上さんにロックオンしてましたもんね」

「でもアレは、査定で落とすぞっていうロックオンなんですか、それとも、目を掛けてるぞっていうロックオンなんですか」

「知らないですよ」

「藤井さんは、真木さんと仲良いじゃないですか、手の内、教えてください」

「彼は厚生省内に生息する典型的な一生物にすぎませんよ。これといった特徴とか攻略法とかないですよ。

鈍い私と違って、尾上さんは何かみつけてるかもしれないけど」

「真木さんは、イマイチ読めないですよね。少子化対策とか言って、巷の人の女心が、分かってるのか、分かってないのか。彼は何でこの課に来たのか」

「女心が分からない人の方が、ここには向くんですよ。何しろ女性の嫌がることをやるのが、日本の少子化対策だから」

「私も女心は分からないです。子供の頃、空気が読めなくて、仲間外れにあったこともあるし」

「私も分かりません。生意気とか言われて、ノートに落書きとかされてましたよ」

 

 

村おこしのイベントをリポートし、嘘を盛り込む。

または現地へ行かなくても良いので、インターネットでの宣伝を主に担う。

現地へ行く方は日当1万円、

狭いビルの一画に出勤して手元の資料などを元に、1村ヨサゲ、みたいなことを書きこみ、自給1000円。

選択を誤ったと堤は言った。

「P村には、大崎が行けばよかったんだよ」

何故なら、

都会でフリーターしてる息子を呼び戻すべや、

あそこんところの倅を紹介するべや、

牛、好きか。

P村は、そういう感じだと堤は言った。

「どっちも無給でコキ使われることは、変わらないけど。

男の方が、セクハラ受けないから良いよ。

他のアルバイトと、そんなに変わらないし、イヤならやめて戻ればいいし。給料さえ出れば」

ここからP村へは、新幹線と鈍行を使って6時間、2日ほど泊まり込み。合わせて4万。悪い収益率ではないのだが。

誰かが仮に、イザ村に定着するとなれば一銭もでないというから、人が来そうな気配は皆無だった。

「でも落ち目のアイドルとか営業に来てたよ。海野が行けばよかったのに」

「その、落ち目のアイドルも、牛好きか?とか言われるの?」

「落ち目でもアイドルですっていれば、遠慮してくれるんじゃないの」

「そういう遠慮がないのが田舎者なんだよ。P村くんだりまで来ている時点で、何か負け犬臭が漂うとか、足元見られてる」

「広報を仕切ってるの、D通のリストラ組っていう噂が流れてたけど、どうだった?」

「D通かどうかわからなかった。でもイケメン多くて、アイドルを連れてあぜ道を散歩してたりとか、オタクが発狂しそう、海野みたいな」

「俺はそのくらいじゃ発狂しない」

広告を非表示にする