ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

ロックバンド・インパール4


ブラウン管の中の在日タレント、瓶鶴は、田舎で酒を飲みすぎて酔っていた。

村人との交流と称して杯を受け取ったら、思わぬ強度の酒が入っていたのか。

海野はこの番組が好きではないが、

テレビを消し忘れたまま、パソコンをいじるとか、部屋を片付けるとか、他の作業を始めると、そのまま次のテレビ番組が液晶画面で続行していることがあった。

こういう番組って、地域興し隊とかの被害にあった応募者が請求しても、ビタ一門払わないだろうし。

この番組を作っている人々は、30代で年収1000万以上あるんだろうから、

ポケットマネーで払ってあげなよ。と、大崎は思う。

そもそも自分たちが払った受信料とやらが、そう、彼らは税務署より執拗だ。

その受信料が、無給で人をコキつかう農村の暗黒面を模糊する為に、利用されていると思うと、海野は胸糞が悪い。

大本営発表は、まだ生きている。

瓶鶴は、呂律が怪しい。

「ただの島じゃないですか、こんなの、くれてやればいいんですよ」

田舎にバンザイも、ついに竹島に行ったか。やったな。

大崎に、次の展開は読めなかった。

「オチンチンビローン」

 

 

俺はテレビが好きだった。子供の頃は。

大崎はウンザリした。

俺の蹴りをまともに食らって吐いたADのゲロが掛かってしまった。

無駄な業務と溜まっていくストレスにより、抑制のかからない行為。


女性ADが、咳込んでいるADを助け起こそうとしている。

大崎はP局に入社して十数年、気が付いたらヤサぐれていたが、さすがに女にケリはいれない。というか、女の方は、そこまで使えない奴じゃないし。

ただ、この女の方も、ある意味バカに見えた。

例えば、その若さと容姿があれば、あそこでグルメ番組の残りをつついているアイドルたちのように、

テレビカメラの前でヘラヘラしていた方が楽なのに、

この女は何でこんな土方仕事をしようと思ったんだろう。

女には世相に流されながらヘラヘラするという選択肢がある。

かといって、世相に流されながらヘラヘラしていると、ロクでもない目にあうことがあるけどな、俺みたいに。

まあでも、そういう篩に掛かるから、こういうところに来る人材は、女の方が使える率が高いというのが大崎の所見。

 

それに、大崎が彼女たちをバカだと思う理由は、他にもあった。

何で落ち目のテレビに来るのかな?

バブル期に入社してしまって、もう降りることができない俺たちとは違う。

今はやりのユーチューバーとかに、なればいいじゃん。

技術を身に着けて独立しようと考えているのかもしれないけど、

ここでこうして俺に蹴られたりしていては、大した技術は身につかない。

上は、番組制作スタッフなんか育てるつもりが無いから、製作費を安く上げる為に、下請けに任せているんだし。


大崎はよく、黙って使われている下請けの人たちを見ているとイライラした。

たまにこっちの胸ぐらをつかんで、殺すぞ、くらい言ってみろ。

大崎にも、ああ俺が指示を誤ったな、とか、上との板挟みで仕方なく、っていうことはある。

そういうときでも彼らは、澄んだ目をして、ハイ、ハイ、ハイ。行ってきます。すみません。

彼らは、物を言わない、不思議な人種だった。

まあ、そんな奴隷がしたければするがいいさ。

大崎はゲロ臭い靴を脱いで、ADに拭かせている間、

気分を変えようと思って、胸ポケットから携帯を出し、着信をチェックして、折り返し電話した。

「Pさん、何か予定入ってますか」

「バックストリート・クリムゾンのティラノザウルスが、NHKでひどい目にあったから、うちの局で話したいとか言ってるけど」

「NHK、いいですねー。いや、いいですねー」

大崎はPの発した浮かれた単語に同調してみた。

NHKは、下請けイジメなんかしない、上から下まで、公務員並みの給料が払われるホワイト企業だ。

あそこは企業っていうのか、官庁とまでは言わないが、特殊法人だっけ。

「そう、いいの、いいんだよ。でもそれは、俺が掴んだネタだから。ティラノは俺の友達だから、俺が話を聞く。あとでVTRの編集とか頼むかもしれないけど」

「あと、心霊スポットっていうレトロな企画がある。今の子たちには、一周回って新しいとか。どう?気は向く?」