ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

ロックバンド・インパール9


「俺はPにブツを渡してた、アッパー系のやつだよ。

何か、徹夜続きの時なんかに、使うんだよ」

「何でPが俺をハメる?まあ、鮫島辺りに、聞けば分かるのかもしれないけど」

「だって、あのいけ好かないNHKをはめたのは俺って、自慢してたから」

「でも、Pはお前の客なんだろ」

「だってPは、もう俺から買わないんだってさ。バイバイってこと、だからちょっと、仕返し」

マルサくんは、珍しく笑った。彼の白い歯は意外とまぶしい。中野がアフリカを取材していた頃から、黒人はだいたい、そうだった。煙草のヤニとか、ヤクにまみれて真ッ黄色になっていたり、しない。

そういう黒人だって、いるかもしれないが、中野は会ったことがなかった。

 

中野は、数年前に入力したままそれっきりになっている番号を呼び出した。

その番号の持ち主も、また彼の軽蔑する、パパラッチなるもの。

中野はそういう雑誌記者風情に接触したことはない。

数年前の受信料未払い騒ぎのときに、局内の派閥抗争について聞かせて欲しいとか言って、一方的に追いかけられたことがあるが、

興味がないし、そもそも箝口令が敷かれていたのでほとんど接触しなかった。

 

 

「霊だよ」

Pは鼻糞をほじりながらいった。

Pは部下に甘えるタイプだ。

本当にお前は俺の女房だから、みたいなことを言い出しそうで、勘弁して欲しい。

「霊が出るっていう村にいくんだよ」

石田は憮然とした。

Pはいつも、美味しい仕事が口癖だった。その仕事が美味しかったためしが無い。

Pは番組企画のセンスはあるが、どうでもいい仕事を部下に押し付けるクセがあった。

「何ですか、そのセンス、30年前だよ。逆に貴重?どこが起死回生なんですか」

「起死回生とは言って無いよ」
「起死回生とか言わないで下さいよ。まるで俺が死にかけてるみたいじゃないですか」

Pはほじっていた鼻くそをピンと飛ばした。

ここでは話がズレても誰も咎めない。

話が噛みあったり噛み合わなかったりすることに、既に石田たちは重きを置いていなかった。

こうなって数十年、というか、入社したときからそうだ。

無意味なことに全力投球する為のテンションをキープすること、それが大事だった。

それに、無駄なことに神経をすり減らすのはアホみたいだし。

世の中、神経のすり減ることは無数にある。

インターネットが普及してテレビ局の屋台骨傾き始めると、そういう傾向に拍車がかかった。


「でも、何かあることは間違いないんだよ。D通の人がその村行ってるとか。

その一帯は、田舎フェチのNHKが寄り付かない魔窟だとか」

「D通は潰れたんじゃないですか」

「まだ噂じゃん」

「そういう噂はどこから拾ってくるんですか。Pさんの願望じゃないんですか」

「心霊番組は、最近の子は知らないから、ウケるんだって。

僕も誰のフカシか知らないんだけど。

そういえば俺の子供も妖怪ヲッチとか集めてたよ。流行が終わったから、もう捨てちゃったけど。儚いもんだよね。


まあ、とりあえず、他に当面頼めそうな人いないし、断ると、お前も仕事なくなるから、よろしくね」