ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

ロックバンド・インパール17


「あそこのブルーシートが、何か気になるの、見に行っていい」

「はあ、いいんじゃないの」

「じゃあ、小沼さんも、一緒に来て」

小沼は、この仕事の合間に仲良くなったアイドル平田ウノになつかれていた。

腐っても鯛、

一度離婚して高校生の子供が2人いる小沼に、彼女が途切れたことが無いのは、名刺のせいではない。

が、小沼はそういうことに慣れているので、あんまりありがたみがない。

平田ウノについて山に分け入っていくと、

足元の岩を、モコモコした苔が覆っていて、足の裏に伝わってくる岩の堅さを和らげていた。

苔の臭い、けっこういい臭い。心が落ち着くような。

出来心でブルーシートをめくってみた。

白骨が散らばっていた。


「どうしよう、どうしよう、何かヤバイ

平田ウノが隣にいるのも忘れて、小沼は動揺した。こんなものが見つかっては、

地域おこしどころじゃないだろう。

見つかってはいけないからブルーシートが掛かっているのである。

そういうものを見つけた人がどういう目にあうか。

小沼たちは、そういう例を腐るほど見てきた。

俺たちの再就職先は、1年もつかどうかと思っていたが、いきなり終わりなのか。


「何で?」

「それ骨だよ!人が死んでるんだよ」

平田ウノが人骨を触ろうとしているので、小沼は引きとめたが、

平田ウノは洞窟に一歩足を踏み入れた。

「こういうのは、踏みつけたほうが、縁起がいいんだよ」

平田ウノは洞窟にさらに踏み込み、骨を踏み荒らし、辺りにザクザクという音が響いた。古く、脆くなっていて、粉々になる骨。

「マジですかい」

平田ウノは靴の底についた骨を、洞窟の側面の岩にこすり付けた。

「こんなところで骨になってるのは、負け犬なんだよ」

辺りは鬱蒼とした林。遠くの方で名前の分からない鳥が鳴いていた。

山深い緑の中で、小沼は祠の空気を吸い込んで、変な気分になっていた。おまけに人骨まで目にしてしまった。

もうどうでもいい気分だ。

「オジサンはね、負け犬って何なのかなって、思うんだけど」

小沼は言いながら、心臓がドキドキした。

小沼には、そういうことを人に聞いた経験はない。

鳥の声だけが、祠の静寂を破っている。

「うーん、今のウノののシュチュエーションでいうとー」

「それは、良い種馬を見つけないから。サラブレッドに乗らないと、騎手は勝てないんだよ」

小沼は、どうでもいい気分に拍車がかかった。

はあ。そうなのか。

でも、種馬っていう例えは何なのか。

彼女は婚活中なのか。妊活中なのか。

こんな田舎に左遷されそうになったら、そりゃあ、そういう気分にもなる罠。

キャリアプランのチェンジ。それとも、サラブレット云々は、事務所のことを言っているのだろうか。で、騎手はアイドル。

何だろう。男紹介しろ?

それとも、そんなことは全然関係なくて、馬の例には、深い意味がないのか。

目の前の骨から想像される、当然の何かなのか。

仕方ないか。彼女たちは、当人たちが、そういう扱いを受けてきているのだから。

競走馬は、誰よりも速く走り続けけなければ、ドサ周りや屠殺が待っている。

「でも、小沼さんは、サラブレットじゃん」

ウノちゃんって、俺のこと左遷されたしょぼくれたオッサンだと思って本音はいてるの?

気の置けないかけがえのない人ってやつ?

小沼は目の前のアイドル崩れの真意を探るのを諦めた。

 

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