すみま千円(漱石のほう)

レポート置き場かな?宜しくお願いします。

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「私は子供の頃、妹の骨を見たことがあるよ。妹は体が弱かったし」

小沼は子供の頃に骨を見たことは無い。家族はみんな健康だし、

冷静に考えれば、

弟は大手の銀行員で、親父は霞が関の住人だった。

かといって、オッサンはオッサンだった。

いずれ老人ホームで仲良く肩を並べてボケていく運命にある。

その前に、死ぬかも。

2人はブルーシートを元に戻すと、元来た道を、無言で歩いた。

「俺はサラブレッドじゃないよ。

こんなところに飛ばされて、変な骨を見つけちゃったりするし。運に見放されたんだよ。

あまりにダサいから、ここに来ることは、誰にも言ってないし」

「そんなことないよ」

「ウノちゃんは、俺に気がある」

「ブブー、ハズレ。小沼さんは、オッサン過ぎるし。62は年齢差は30まで」

 

 

彼らが宿泊先として提供されたP村の公民館は、10人ほどが雑魚寝すると一杯になる。

真ん中のテーブルにペットボトルのお茶とセンベイが置いてあった。

「私のパパは総務省の平田正弘って人」

唖然とした目線が平田ウノに集まった。

「っていうか、総務省って何」

「それってサラブレットじゃん」

小沼は、裏切られたような気がした。

「なら見合いとかすればいいんじゃないの。こんなところでドサ回りしなくて済むよ」

小沼はふくれっ面をした。三村は興味深いと言う顔で、平田ウノをまじまじと見た。

「オジサンは猛烈に羨ましいね。ウノちゃんのこと、落ち目だと思ってナメてたよ。すみません」

「じゃあお前、平田家の召使とかやればいいんだよ。警備員とか」

パリポリとセンベイを噛む音が、鎮まり返った田舎の夜に響いている。

「パパは面白くない人だしね。そんなパパの紹介する人も、きっと面白くない人」

「あんまり面白くても、危ないんだよ。こういうところに左遷されたりとか」

「じゃあ誰がいいと思う。トトカルチョ

「俺たちみたいな坂道を転げ落ちた男に聞いても、縁起悪いよ」

「人生は、諦めちゃ、ダメなんじゃん」

彼らにとって、こういうのはネタに過ぎなかった。

小沼たちは、要人の子弟を抱え、中央とズブズブの、かつての自社の風潮を、大っぴらに風刺した。

悪乗りした三村は、パソコンで、昔の仕事用のファイルを引っ張り出した。総務省の口利き先リストだ。

「パパの書斎とかに忍び込めば、もっと詳しいのがあるよ、多分」
「そんなの無いでしょ。役所に行かないと」

とはいえ、すぐに三村たちは途方に暮れた。

賭け事は瞬時に決まらないと意味がない。

競輪、サッカー籤、麻雀、カードゲーム、パチンコ。

霞が関の出世レースは、次官級なら60代まで続く。

こんなの、何年かかるんだ。どうやって、何を賭ける?

企画がスパっと決まらないのは、彼らにとって悲しい瞬間である。シケた空気が、公民館に満ちる。

「お前ら、総務省倒すとかいって無かった」
「逆に組むの?」
「それって途上国だよ。すごーく途上国だよ」

夜が更けて、彼らが布団に入ってからも、この話は続いた。慣れない布団では眠りにくいし、将来不安が彼らを神経過敏にした。

 


佐藤は心霊番組のスタッフに謝礼で貰った饅頭を食べていた。村で売ってるやつ、珍しくない。

「刑務所を誘致すれば存続できるんじゃないですか」

徴農

役場の連中は、そういうことですぐ踊った。

しばらくすると、都会の人はクソだとかなんとか自分の元にグチりにきて、ついでに金まで借りて行った。

何でも、誘致活動に金がかかったからとかいって、徴収されたとか。

当然、返してもらっていない。

佐藤は子供の頃から体も丈夫で、農作業があまり苦になったことがない。

夜にダラダラ見ている、くだらないテレビ番組も嫌いじゃない。何でもよく食べて、不満は少ない。

この村の山奥に、かつて口減らしや姥捨てをした村人を鎮魂する祠などがあるのは本当だった。

村役場の連中は、それを、雪崩防止の工事とか、木材置き場とか称して、ブルーシートを掛けて隠ぺいした。

左遷されたというイベント屋のオッサンが気の毒で黙っていたのだが、

あまりに黙ってるのも何なので、今度は心霊現象を探していると言う奴が丁度いたから、そいつに教えてやった。

ブルーシートの下の骨は、戦前の食糧不足で死んだ、幼少時代の祖父の幼い妹のものとか、隣のバアサンの乳飲み子のものとか、いろいろある。

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