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2:忙しいので書き殴りです、後で直します(すまん)

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Rio Grande2

 

アドリアナは、工場に満ちる血の臭いに、いつまでたっても慣れることができない。

つるされた牛や豚を解体するのが彼女たちの仕事だった。皮をむかれた牛や豚の巨大な死体は、次から次へと用意され、いくつ解体しても仕事は終わらない。

朝日が昇る頃、薄暗い工場へ出勤し、作業が終わる前に、辺りは暗くなって、蛍光灯がついた。

故郷に残してきた娘が心配だ。何度連絡しても音沙汰なしで、ここへ来る従業員宛ての手紙は全て捨てているという噂もあった。

ケータイは、工場主にとって、通報などされたら困るから、持つことができない。

ピーナツみたいな給料を貰い、部屋代と食費でほとんどが消えた。メキシコの実家へ仕送りする目論見は外れた。


「アメリカへ行けるママが羨ましい。

私も、一生懸命勉強して、いつかアメリカで働けるようにするよ。

叔父さんたちも、メキシコシティにはロクな仕事がないって嘆いてる。アメリカは怖いところだけど、メキシコほどじゃないし、何と言っても夢の国です。

ママは体を壊さないように気を付けて下さい」

リオグランデを超えて越境する前に、メキシコ国境周辺で受信したメッセージが、娘との交信の、唯一の記録だった。

 

アドリアナは、解体で出た廃棄物を、外に捨てに行く仕事が好きだった。

立て込んだ老朽化した建物の隙間に広がる青い空、曇り空、夕方なら赤い夕焼け。

かすかに立ち上る、砂埃の臭いと、たまに吹き付けてくる気まぐれな風が、作業服に染みついた血の臭いを消してくれるような気がする。

もちろん、風が吹いたくらいでは、血の臭いは消えない。でも、一瞬でもそういう気分になれることが、大事だ。

 

 


「お前らは、幸せだよ、
メキシコに帰ったって首からタイヤをかけられて焼かれてお終いだ。
ここは安全だ。
誰もお前らにヤクを売りつけたりしない」

それは工場主であるハックマンの極論で、プロパガンダだった。メキシコには、治安の良いところもあれば、治安の悪いところもある。

ホセは、いっそうのこと、ヤクが欲しかった。

ジュニアハイスクールの頃に、兄の友達に分けてもらって、一回吸ったことがあるだけだ。子供だったし、何の成分かは、分からなかった。

茶色っぽくて、燻して吸うやつ。それは余り効かなかったけど、今は慢性的な疲労、体のだるさが悩みだし、ヤクがあれば助けになるだろう。

狭いタコ部屋に10人くらいで、雑魚寝して、床に転がって泥のように眠り、朝起きるのが憂鬱だった。

このまま何も考えずに、ヤクを吸い、廃人になって路上で寝ていたい。何もかも捨てた心地よさと、通り抜けていく風。

そういうとを想像すると、至福の瞬間が彼を包む。

が、ここアメリカの土地に、不法移民にそういうスペースはないし、そしてヤクは、アメリカにしろ、メキシコにしろ、非常に高価だった。

ここでは、ヤクのディーラーは繁栄していた。メキシコ人。アメリカ人。黒人。いろんなのがいた。

それでますます、ヤクの流通ルートになっているメキシコの治安は悪化した。

貧窮化した田舎の土地のいくつかが、大麻や芥子畑に代わり、マフィアが辺りをうろついた

ヤクの代金を貯め込んで、軍を買収したマフィアが、我が物顔で、やっぱりメキシコシティを歩きまわった。

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