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ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Rio Grande4


「ドマクルナドの肉にはミミズが入ってるんだよ」

それはくだらない女子学生の噂から始まった。

すぐにツイターで拡散され、ドマクルナドに公式サイトにクレームと問い合わせが殺到した。

「不法移民なんか使うからだ。奴らをアメリカから締め出せ」

もともと、入管のガサ入れで参っていた食肉の工場群は、取引を切られて窮地に陥った。

 


「工場を閉めるなんて、困ります。

アンソニーさんがいなくなったら、私はどうしたらいいのですか」

サルマは出産後すぐに復帰した。そうでもしないと食っていけない。ホルヘはアテにならない。
しかし待っていたのは衝撃的な知らせだ。

「サルマさんは、子供が市民権を持ってる。アメリカで暮らすことができるよ。

役所へ行って、相談したらいい。隠れることは、無いよ」

サルマの相手は、同じ工場の不法労働者、ホルヘ。

ホルヘは、抵抗できない女の寝込みを襲うような、どちらかというとロクデナシだった。

あの狭い雑魚寝部屋。男女は別々の部屋になっていたのに、明け方に忍び込んできたホルヘ。どうして大声を出して、他の人に助けてもらわなかったのか。

アンソニーは良い工場主だった。


労働者の私生活に、余計な口出しをしなかったが、それが裏目にでた。

サルマはホルヘについて、アンソニーに相談しなかった。それで気が付いたらこういうことになっていた。腹ボテの、不法移民の女。

2人は行きずりの関係で、あまり愛着はなかったが、ホルヘもアメリカの居住権が欲しかった。それで、サルマと仲が良いっていうフリをしてきた。

何か微妙。父親の存在なんて、DNA検査でもしない限り、明確な証明はできない。が、サルマはホルヘとしか寝たことがないと、正直に申告した。

近所の、お金持ちそうなアメリカ人を一方的に指定してもよかった。でもそんな事実はないし。それで、DNA検査とかされたら、コトだし。正直に言うしかない。

それで2人の仲は、既成事実になった。

サルマたちはそのことで、同僚たちから、やっかみの目で見られていた。子供の市民権を取る為に、計画的に妊娠するような知能犯はココにはいない。そういう手があったのか。

それに疲れているから、布団に入ったらすぐに寝てしまうし、色恋の発生しそうな余地がない。

ただ、彼らがサルマをやっかみの目で見ようが見まいが、この工場は閉鎖され、すぐに次の仕事が見つからない限り、彼らはメキシコへ送り返される。

 

 

 

 


ホワイトハウス近隣はスタッフの入れ替えが行われた。オフィスを移り、住居を変える人。

フェアウェル・パーティーをする人。去っていく民主党員と、入ってくる共和党員が入り混じった。

互いに見知った顔もあった。彼らは、放っておいても政治談議をした。

「メキシコ人に、IDカードを持たせる?

そうしたら、彼らのことを、既に不法移民とは呼べないのでは?」

「ソーシャル・セキュリティ・ナンバーとか、社会福祉の対象にしなければいいんです。

ただ、それを一時的な入国許可の代わりにして、彼らが失業したり不良化したら、いつでも強制送還できるようにするんです。

まっとうな法律にのっとて。

そうすれば、彼らがどこへ潜って悪さをしようが、私たちはいつも突き止めることが出来ます。

そうすれば移民を安く使いたい雇用主の需要も満たせるし、出稼ぎしたい人たちの要望を叶えることができるし、

犯罪対策にも役立ちます」

「私たちは、移民自体に反対なんだよ。

不法移民は、まっとうな労働者たちを、不当い安い給料で駆逐する。

それが白人労働者たちの反感を買って、メキシコ国境を遮断する、ヒランプ大統領の爆誕になったんです。

私たちは、時流を読み間違えてはいけない。

大統領はリオグランデ沿岸に、高い壁を築くんです」

「防壁は良いです。ただ、彼が掲げているのは白人至上主義です。

アメリカには、既に多くの人種がいるんです。アメリカは、世界から人材を受け入れるのが、国家戦略の柱だった。

バーマオ大統領の元で、せっかく融和していたのに、ヒランプ支持者は、ただの、タチの悪い既得権益だ。

彼らは、就業差別を受けやすい、黒人やインディアンに優先枠を与える、アファーティブアクションを非難していた。

それが、今度は、白人のアファーマティブアクションをやろうとしている」

「そうかもしれないけど、民主党的に言えばね。だけど、最初に入植してこの国を作り上げたのは、白人だ」

「インディアンを土地から追い出し、クーリーや黒人奴隷を搾取して、でしょう」

「そういう昔のことは、もう、どうでもいいんですけど、これから、労働者の賃金を時給600ペソなら600ペソにして、成り立つかどうかです。

お手並みを拝見したい。アメリカの製造業のライバルは世界中にいます。

彼が進退窮まって、正規の労働者を時給200ペソでコキ使い始めないことを祈るばかりだよ」

「だから俺たちは、元経営者を大統領に選んだんだよ。民主党補助金乞食とは違うんだよ」

「ヒランプさんは、ホテルの従業員に給料未払いで訴えられてますよ」

「アメリカは給料未払いをすれば訴えることができる。法治国家だから」

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