ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Rio Grande5


アロハシャツは、ナタリアをベットに誘った後、しばらくしてからマフィアに売った。

アロハシャツの隣には、新しいメキシコ女がいた。

胸、腰、ムチムチした長い脚。

ハードボディって言う感じ。真っ赤なボディコンのスーツが、褐色の肌に映えていた。

愛人の座を奪われ、アロハシャツの子飼いのマフィアの元へ移ったナタリアは、毎日、客を取らされた。

 

 

 

 


手の傷は、しばらくすると治った。

アドリアナは、アロハシャツから身を隠して、広目の喫茶店に職を得た。

給料はスズメの涙だ。工場より悪い位だった。

カリブの太陽、というメキシコっぽい店名だが、店内は明るくない。建てた時の採光がよくないんだろう。

あんまり、最高の再出発とは言えない。

だけど、アドリアナには身を隠すところが必要だった。それに、イヤな店ではない。

あの食肉工場より、悪いところはあまり思いつかない。ただ、やっぱり、ペイが安い。あまり仕送りできない。

彼女はしばらく穏当にウェイトレスをこなした。皿を洗う、ホールへ立つ、注文を取り、食事を運ぶ。

イビリや不法行為は無い。

ある日、冷やかしに街をブラブラした帰宅途中に、思いがけず、薄暗くなりかけた繁華街の街角で、立ちんぼをしているナタリアに出くわした。

街頭に浮かび上がる、広すぎる胸元に、おかしなパープルのミニスカート、でも綺麗な娘った。こうして見ると。

「あんた、何してるの」
ナタリアは吹き出した。
「見れば分かるでしょう」
「私の言うことを、聞いておくべき立ったと思う?」
「アドリナアってば、ママみたいよ」

自分には縁の無い仕事、叱ってもしょうがない。

自分が19歳だったら、どうか。良い暮らしの夢を見せて、メキシコ娘のカモを釣る、アロハシャツの誘惑に耐えらえたか。


久しぶりに会ったナタリアはスレていた。

アドリアナは意外にも、それを心強く思った。

純朴でわきの甘い同僚と、行動を共にすると、自分まで巻き添えを食うことになる。

ナタリアは以前吸わなかった煙草を吸い、心情を吐きだした。あそこは安い通りで、客も安手の奴が多いと。恋人や妻子のよりつかない、メキやあぶれ者の白人。

「結局アレなのよ。

奴らは女を痛めつけて、快楽を得る。

彼らの言い分はこうなのよ。

俺はずっと痛い思いをしてきた。

痛い思いを、快楽に変えないと、俺の人生は回らない。

世の中には、俺を痛めつけてくる奴しかいないからだ。

だから俺だって、誰かを痛めつけることが必要だ。痛みは、快感だ。

お前もそう感じるだろう。

このアメリカには、お前を痛めつける人しかいない。恐らくメキシコにもだ。

この救いようのない地獄をせいぜい楽しむことだ。

地獄だって考えによっては天国なんだからな。

それで私は痛い目にばかり会ってきたわ。

セックスが快感だと思ったことはほとんどない」

 

 

 

アドリアナはナタリアを、働いていた喫茶店、カリブの太陽に紹介した。

カリブの太陽の、ほとんどは不法移民だった。とくに裏で皿を洗ったり清掃をするスタッフは。

ナタリアはかつて住込みというか、閉じ込められていた売春婦用のタコ部屋を抜け出し、アドリアナのアパートに転がり込んだ。

アドリアナのアパートは狭くなった。

ナタリアは退廃的な生活スタイルが身についていたから、仕事に慣れるには少しかかった。

ただ彼女は単に、子供でモノをしらないだけだったから、すぐにキビキビとホールを動き回るようになり、綺麗な姉ちゃんとして常連客に噂された。

「姉ちゃん、俺は、あんたが気に入ったんだ。外でつきあってよ。店が終わってからでいいよ」

そいつは、見慣れない客だった。こういう事態を、店長は恐れていた。

不法移民のメキには、皿洗いや清掃だけさせておけばいいのかもしれないが、綺麗な姉ちゃんの集客効果は無視できない。しかしそれは、こういうリスクと隣り合わせだった。

ナタリアは英語があまりできないが、ゴーアウト、ウィズミーみたいな感じのことは、聞き取れた。

「お客様、ここはデートクラブでは無いんです。良いデートクラブをお探しでしたら、安く紹介しますので、申し付けて下さい。うちのスタッフをいじめるのは勘弁してください」

店長は普段のぞんざいな態度とは打って変わり、揉み手をして客を懐柔しようとした。ナタリアに絡んでいる客は、黒人と白人のハーフみたいな男だ。黒いシャツ、茶色のパンツ。無頓着な服装、何の仕事をしてるのかは、分からない。

「あんた、この子は違法なんだろ。こういうところで働くのが。俺がここで誰をナンパしようと、俺の勝手だよ。入管に通報してやろうか」

店長はメキシコ人だろう、多分。顔立ちもチカーノだし、スペイン語も堪能だ。

ただスペイン語でペラペラしゃべっているところを客に聞かれると、いかにも不法移民のたまり場だと思われるから、店では英語を使った。

 

 

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