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ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Rio Grande6

 

「ナタリア、あの客につきあってきてくれないかな。店にいるときと、同じだけの給料を出すからさ」

「店長、それはないでしょう。

店長の言った通り、ココはデートクラブじゃないんですよ」

アドリアナが抗議した。アドリアナは、まるでママみたいよ。何か言うと、ナタリアは良く笑う。アドリアナは38歳、ナタリアは21歳、本当に親子くらいの年齢差だった。ナタリアのことが、娘みたいに心配だ。

「じゃああんたはココが潰れても良いっていうのか。あんたたちは強制送還されるんだよ。金も入らない」

店長は悪い人間ではなかった。ギスギスした、精肉工場のハックマンより、全然良かった。彼のおかげで、2人は隠れ家を手に入れた。

店長は彼なりに、精一杯やっている。従業員にキツく当たることも無い。が、迷惑客を手際よく追い払うほどの手腕は持っていない。要領の悪い経営者で、だから給料も渋いのだ。

店を出ると、黒シャツの男は、ナタリアをすぐに自宅へ連れ込んだ。

ナタリアは暗澹とした気分になった。

見た感じ無愛想でも、寝てみると気遣いの出来る良い男ということはあるが、彼は全然、良い男じゃない。良い男じゃないから、こういうことをしているのだ。

この先、何度も呼び出されるんだろうか。ナタリアは店長を呪った。何がデートクラブじゃない、だ。完全にデートクラブだ。

アメリカには嫌な男が多い。

ナタリアは黒シャツの自宅の住所を覚えたが、警察に訴えたら、不法移民の自分も捕まってしまう。匿名で通報したらどうか。彼には余罪があるかもしれない。

黒シャツの部屋を見回した。そんなに大きくない一軒家だ。

黒シャツは、こうやって女に払う金も節約しているから、金回りが悪くないのかもしれない。

何か盗んでやろうか。ナタリアは、男が彼女を押し倒しているときに、良くそう思った。

それで、どこかへ隠してしまえば、ナタリアがやったという証拠はない。

彼だって、やましいことをしているから、訴えられないはずだ。胡散臭いのは、お互い様だ。

 

 

 

 

 

アンソニーは、工場を廃業して、ある富豪が経営するという牧場へ足を運んだ。

広い牧草地を駆け巡る、サラブレッドや黒い牛たち。

ダンガロハットなどを被っているオッサンがその辺をうろつき、牛を囲いに誘導したり馬に乗って曲芸を披露していた。

ガンマン同士の対決の劇もあり、子供を連れたツアー客が列を成していた。コレが、斬新な経営ってやつか。

アンソニーの知らない世界。

彼らは同じ食肉業界といえば、食肉業界だ。

だた、広い牧場の所有者は富裕層が多く、彼らは畜産コンテストで最優秀賞を取るような、高級な牛や馬を生育していた。

アンソニーは、いいかげん、安物を仕入れて、不法移民をピンハネして使う、薄利多売の商売にウンザリしていた。

アンソニーは、前金を払うと、他の客と共に、馬への乗り方を習い、次に牛の品質についてレクチャーを受けた。

青々とした広い牧場、遠くに映えるそびえたつ山々。いかにも立派そうな茶色の毛の生えた牛が、その辺で草を食んでいた。

彼らはコンテストなどで入賞した種牛を買付け、めぼしい牡牛と交配させる。そうして次々に、品質の良い牛が誕生して、ブランドが確立される。


アンソニーは、ログハウスで契約内容を聞いて、目をむいた。

「100000ペソ?そんなの、持ってるわけないじゃないですか」

「あなたが、廃業した元工場主なら、そんなに持っていないだろう。この広い土地を見れば分かると思うけど、元々、金余りの道楽なんだよ、ココは。リスクが大きいし、企業が参入することもある。

交配や育成に失敗して、収益につながらないこともあるよ。

大学の研究所と提携しているところもある。

あなたのいた業界とは、収益の上げ方が違うよ、同じ肉だけどね」

これまでのアンソニーが取引してきた業者はこうだった。狭い畜舎に牛や豚をつめこみ、安いエサを無理やり食わせて、所定の時期が来たら屠る。

「ここが安愚楽牧場みたいな、素人の金を巻き上げて逃げるような、タチの悪い詐欺でないことは分かります。

あなたは、とても誠実な人に見えます。

でも、このツアーの参加費は、リーズナブルな感じだったのですが、私には手が出そうにありません」

「そう、多くの人に参加してもらいたいし、私たちの牧場に興味を持ってもらいたい。でも、実際にビジネスにするのは、大変なんだよ」

 

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