ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Rio Grande8

 

共産劇、というのをやっていて、物珍しさで人が集まっていた。

共和党大会で赤旗を振り回したり、鎌でハリボテで出来た経営者をクビをはねたり、

ヒランプの人形をリオグランデ川に流したり、そういうくだらない劇。


民主党は牙城にしていた労働者の票をヒランプに取られたことに衝撃を受け、

自己批判と、若干のイメージチェンジを図っていた。

コンサルタント曰く、「オッサン向けのプロパガンダが足りないんですよ」。

劇で使う人形は敢えて、幼児が書いたみたいなハリボテで作り、それがジョークであることを示す。

ジョークで茶の間を笑わせた末に、政権を取ってしまったヒランプのやり方を真似た。

 

ハックマンは、地元の入管職員と保安官の態度に嫌気がさし、民主党の変なイベントへ足を運んでいた。

ギリギリの工場には、労働者の人権もクソもなかった。

かといって、労働者の人権がないからといって、経営者の人権があるというのも間違っていた。

金がないから、不法移民を搾取するんだし、

ウォール・ストリートの金融マンのように、報酬を1億とか取っているわけではない。

経営は、ほとんど儲からない。女房は逃げ、子供は都心で就職して音沙汰なしだ。

ハックマンは、次に、イベントで紹介されていた、職業相談所へ行った。


「俺は商売を畳んだら、何をすればいいんですか」

「世の中に、職業なんて腐るほどあるでしょ。

アメリカは日本みたいに、新卒を逃したら一生を棒に振る社会じゃない。

勤め人は気が楽だし、気に入らなければ、また転職すれば良いんだし。

なにしろ、あなたは正規のアメリカ市民です。

時給200ペソで搾取されることは、無いんです」

「それは、イヤミですか」

「それをイヤミと取るあなたの精神が病んでいるんですよ」

 

 


「オイオイ、お前んところは、不法滞在者の巣窟になってるだけじゃないんだな。泥棒まで飼ってやがると来た」

男がひどい剣幕で、カリブの太陽のドアを乱暴に開けた。赤いシャツに、黄色いパンツをはいていた。あいかわらず変な格好だ。

女にモテようとかいう気が毛の先ほどもない。無理やり、言うことを聞かせられる女しか狙わないからだ。

赤シャツは、カウンターにいたナタリアを見つけた。

「そこの女、やってくれたな。俺は可愛がってやったのに。俺の金を盗んだのはお前だろう」

店長が何か言おうとする前に、ナタリアが答えた。

「あなたと押し問答する気はありません。あなたは性犯罪の常習者です。警察に捜査してもらって下さい」

「へえ、そうか。警察に通報していいのか。たまげたよ。随分、頭の良い娘だな」

「良いですよ。あなたが良いのなら」

赤シャツは、ナタリアを睨めつけた。

良い訳が無い。あの金は、盗んだ金だ。

もちろん出所は税務署にも申告してない。警察につつかれたらマズイのはこっちも同じだ。

俺は刑務所行き、彼女はメキシコへ強制送還だ。

ことによっては、俺のカードの方が弱いと赤シャツは思った。

金はまた盗めばいい。ムショに3年とか食らい込むのは痛い。

「ああ、俺の勘違いだったかな。まあ、良い。

店長さん、あんたも従業員の教育をしっかりしておけよ。間違っても、盗人なんかが出ないようによ」

赤シャツは、茫然と突っ立っている店長を見て、天に唾するようなセリフを吐くと、またドアを乱暴に開けて出て行った。

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