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2:忙しいので書き殴りです、後で直します(すまん)

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Rio Grande9

 

閉鎖されたアンソニーの工場を出た、サルマとホルヘは、生まれたばかりの赤ん坊のノエルを連れて、公営住宅で暮らし始めた。

元々行きずりの関係ではあるものの、どちらもアメリカに定住したい気持ちは強い。

ホルヘは昔よりサリマに優しくなった。2人は気さくに何でも話した。困ったこと、未来のこと。

「このヒランプ大統領ってのは何だ。メキシコ人を追い出そうってやつか」

「ヒランプが追い出そうとしているのは、不法移民だけよ。私たちはアメリカの居住権を手に入れた。

彼は敵じゃない。ヒランプは白人以外を軽蔑しているかもしれないけど、私たちは迫害されない」

メキシコやアメリカのメキシコ人居住区では、アメリカ情勢についてのスペイン語の記事がたくさん出回っていた。それだけアメリカへの関心が高い。

ホルヘはサルマのススメに従って、ヒランプの始めた城壁を築く工事の人夫に応募し、サルマは週に3回ほど清掃のアルバイトを始めた。

彼らは休日や仕事帰りに、語学教室に通った。

2人は英語を覚え、ノエルに英語を教えないと、一家はアメリカ社会に適応できない。

サルマもホルヘも、メキシコの治安の悪い地域から出稼ぎしてきた。

だからこそ彼らは当初、素行がいいかげんだったし、アメリカにこだわりを見せた。

彼らの親族はマフィアに取り込まれたり、殺された人もいた。

アメリカに市民権を得て、子供ができたことを報告しようにも、連絡を取れるような人はほどんと残っていない。

 

 

ホルヘは、サルマとノエルににキスをしてから、仕事へ出掛けるようになった。

サルマは、アンソニーの工場のタコ部屋で、ホルヘに寝込みを襲われた当時は性被害にあった気分だったが、

こなってみるとラッキーだったと思うようになった。

工場の同僚は、ほとんどがメキシコに追い返されただろう。


サルマは仕事への行き帰りや、近くの市民ホールでやっている語学教室へ行くことを楽しんだ。

この辺の道路は凸凹しているところもあり、しっかり舗装されているとは言えないが、彼女の感覚からすると、十分綺麗だ。

メキシコティにはガスを食う古い車が多い。そのボロ車が連なる慢性的な渋滞や、公害対策のされない工場の乱立で、街には煙というか靄が立ち込めていた。ここの空気は、埃っぽいところもあるが、概して気持ちが良かった。

道端に乞食や立ちんぼはいないし、マフィアもいない。

市民ホールで英語の授業が終わると、メキシコ人たちは、生活情報を交換した。

「Kマートに売ってる、ナイルパーチっていうのは、安いけど、美味しいのか。

アフリカのヘドロの浮いた池で、変なエサで育ってるから、食うと病気になるっていう噂があるよ」

「魚はあまり食べないよ。肉ばかり」

「私も肉派よ。私は安い肉は買いたくないけど、しょうがない。

私は食肉工場で働いてた。あんなのは、本当は買いたくないけど、でも、お金がないのよ。

ラベルに黒部和牛なんて書いてある、5倍の値段のを買うわけにはいかないの」

 

 


「実証中のアプリを組み込んだ、スマホを貸与してもらえる?」

カリブの太陽の従業員が集められ、喫茶店の一角で、スーツを着たどこかの営業社員が書類を広げて、話を始めた。

彼は黒人だが、スペイン語を喋った。

「あなたたちは、失礼ですが、ソーシャル・セキュリティ・ナンバーを持ってらっしゃいませんよね。私たちの実験に参加してもらいたいんです。

これは社会保障番号の代わりを果たす可能性があります」

アドリアナは観念した。年貢の納め時か。

「私は、不法移民です。大きな声では言えないですが、当局に追跡されたらおしまいです」

黒人の営業社員は、アドリアナを、軽く手で制した。

「まあアメリカに不法移民は多いです。

いちいち追い返していたら、潰れる店が続出して、アメリカの人々は、まともな生活が送れません」

黒人はチラっと店長の方を見た。それから従業員たちに目線を戻した。

「この実験の被験者になれば、その間は就労ビザが出ます。

私たちの会社で就労ビザを申請します。永久に、というわけにはいきませんが、1年くらいは続けるつもりです。如何でしょうか」

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